ノジュール6月号
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著名な石窟寺院や磨崖仏が多い中国やインドと違い、日本では、石で造られた仏像が文化財として評価されることが少ない。実は日本にも優れた石仏が無数に存在するのだが、多くは寺の境内の片隅や旧街道沿い、山道などにあり、人目につきにくいのだ。しかしわたしは長年の寺めぐりの旅の途上で、お堂の中に祀られた仏像とはまた違う石仏の魅力に気づき、以来、どこかに傑作石仏が隠れてはいないかと、あちこち探し回るようになった。 お気に入りの一体を見つけたら必ず写真を撮る。正面からだけでなく、横顔をアップにしたり、下から見上げたりとさまざまなアングルを試すと、意外な表情を発見できる。石仏は素朴な笑みを浮かべているものが多いが、写真の撮り方によっては、悲しみに耐えるようなお顔や、深い思索に耽るようなお顔に見えたりもするのだ。光の具合でも違って見えるため、午前中と夕暮れ時など、時間も変えて撮影してみる。周囲の風景も一緒に写せるので、季節ごとに撮って比較するのも楽しい。よしだ さらさ●テラタビスト(寺旅研究家)。社寺、仏像、宿坊に関する執筆、講演のほか、仏像巡りツアーなども行う。近著に「近江若狭の仏像」(JTBパブリッシング)、また雑誌「一個人」HPにて「石仏様に会いたい!」を連載。自分の 〝お気に入り〞を探す楽しみ北鎌倉石仏探訪取材・文 吉田さらさ愛嬌のあるポーズや思わず微笑みたくなる優しさを秘めた石仏。やぐらの中や境内の片隅にそっと佇む石仏を探して歩く楽しみを、寺旅研究家の吉田さらささんにご紹介いただいた。写真:伊藤千晴52浄智寺の子安観音。赤ちゃんを抱く姿がマリア様にも見える。高野槙の樹下にひっそりと立つ

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