ノジュール6月号
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「どこそこに行くのですが、どこかいい宿を教えてください」 そう尋ねられる機会が少なくない。ただ、これが意外に難しい質問なのだ。「誰と何を目的として泊まるのか」を聞くことができれば、答えはさほど難しくはない。ところが多くの場合、そこまで根掘り葉掘り聞くこともできず、結果として「こういう目的ならどこそこ」と推察しながら挙げなくてはならず、ズバリとお答えできないのである。 もちろん、質問者を責めるわけにはいかない。「宿選び」││これが簡単そうで、実は難しいからだ。世の中には情報がたくさんありそうだが、実は肝心な情報がなく、結局はクチコミに頼らざるを得ない。これが現状ではないだろうか。 宿側にも改善の余地がある。よく客室に「満足度アンケート」が置いてあるが、料理やサービスの評価ばかりを聞いても、従業員のサービス改善が関の山。そうではなく、「満足したのはどういう目的で泊まった客」で、「しなかったのはどういう客」かを調べ、「宿の個性づくり」を手がけることも必要だと思う。 そこで、少しでも宿選びの指針になるようにと、宿の個性を「旅の目的」で2つに分けてしまおうと試みた。1つ目の旅の目的は、「誰かを喜ばせる」こと。もう1つは、「自分自身が楽しむ」こと。 前者は、連れ合いだったり、両親や孫だったり、恋人だったり、誰かを喜ばせたい、驚かせたい、と一種の「幹事役」になったときに選びたい宿。後者は、自分自身や価値観を同じくする友人同士が気兼ねなく過ごしたいというときに選びたい宿、である。例えば、食事をお部屋に持ってきてくれる宿は前者、秘湯の宿などは後者といえるだろう。 と、ここまでは、誰もが納得していただけると思う。しかし意外に多いのが、前者(誰かを喜ばせたい)と思って、後者(自分自身が楽しむ)の宿を気づかずに選んでしまい、満足が高まらないケース、あるいはその逆のケースである。「家人のために、仲居さんのいる宿がいいと思っていたら、そうではなかった」「ゆっくり楽しもうと思ったら、若いカップル実は難しい「宿選び」旅の目的で宿を分けてみるあなたは宿の何に満足を感じますか?誰かを喜ばせる宿簡単そうで難しいのが「宿選び」。誰と何の目的で宿泊するかによって、得られる満足は大きく違うはずだ。そこで、満足できる宿を選ぶために、「誰かを喜ばせる」のか、「自分たちが楽しむ」のか││この2つのポイントで宿選びを考えてみた。12赤倉観光ホテルのアクアテラス。感動体験も人を喜ばせるひとつのアイテム

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