ノジュール6月号
5/15

ばかりだった」という場合もあるだろう。 ただし、この「どちらに当たるか」は、実はその当事者になってみないとわからない。人によって多少変わるからである。そのため、本誌で分けてしまうのはとてもリスキーなことだが、あえて、私だったらこういうシチュエーションで使うという事例を挙げてみた(14〜21ページ)。「誰かを喜ばせたい」。そう考えたとき、サービスのよい宿であることが第一であろう。しかし、サービスの受け取り方は人それぞれだし、そのときの運もある。それ以上に大切なのは、「一生懸命に選んだ」という気持ちではないだろうか。できれば、相手も何かでその宿を知っていたり、潜在的に好みだとわかっていたほうがよい。そのうえで、例えば「予約の取れない憧れの宿」だったり、「絶景の宿」「美食の宿」「一棟貸切りの宿」など、さまざまなカテゴリーを思い描き、選んでいくのがよいだろう。必ずしも高級宿が喜ばれるというわけでもないと思う。 ちなみに、私も5月の連休に、この後で紹介するうちの一軒を訪ねた。その日は、ちょうど満月。静かな森で満月を愛でようと期待を持ちつつ宿を目指した。理想を言えば、宿のリストを引き出しにしまっておき、訪ねるタイミングがベストになるよう、時々シナリオを考えることも重要である。「自分たちが楽しみたい」。この思いを成就させてくれる宿が近年とりわけ元気だ。それは、決して高級宿ではなく、無駄な機能を極力そぎ落とし、コストパフォーマンスを維持しつつ、温泉の泉質や清潔感、客室の機能などを満たした宿。そこには、豪勢な会席料理は不要だが、ささやかでも地や旬の食材がある。そうした宿は、比較的チェーン化しやすく、そのため、同じチェーンを渡り歩く人も多い。 誰かの記念日に泊まるというよりは、価値観が同じ仲間同士や同窓会、あるいは、家族で気軽に訪ねるのにちょうどいい。こうした宿の特徴として、人数・曜日による価格差があまりないということがある。その背景には、週末・平日の稼働率に差がないことがうかがえるのだが、それは、平日も女性・シニア・小さな家族連れなどで埋まっているということにほかならない。 さて、今回の旅では、どちらの宿を選ぼうか。 いかどたかお●1961年生まれ。井門観光研究所代表取締役。関西国際大学経営学科准教授。旅館の診断・分析に精通した宿のマーケティングプランナー。観光地再生の仕掛け人としても活躍。全国を訪ね歩くかたわら、インターネット等で「いい宿」情報を発信している。自分たちが楽しむ宿誰かを喜ばせる宿自分が楽しみたい宿選・文:井門隆夫※ステージの内容は写真と異なる場合がございます。13nodule 2012 June青森屋「みちのく祭りや」のショー。ノリのいいイベントで自分を解放しよう

元のページ 

10秒後に元のページに移動します

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer9以上が必要です