ノジュール9月号
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ら明治にかけて、神社やお堂の境内に13ヵ所もの芝居専用の小屋があったそうだ。小さな集落単位でこれだけの舞台を建てたということに驚かされるが、村人が芝居にかける情熱は昔も今も変わらない。たとえば竹下内閣時代の「ふるさと創生事業」で交付された1億円のうち、大鹿村では約半分を歌舞伎関係の経費にあてたというほどなのだ。 現在村内には4つの小屋が残っているが、近年は春の公演で大たい碩せき神社、秋の公演で市場神社の舞台を使用。どの小屋も回り舞台や太夫座などが設けられた本格的なもの。舞台に関わる大鹿歌舞伎愛好会のメンバーは30名ほどだが、演目によっては子役を頼んだり、臨時で住民に役をお願いすることもあるという。レパートリーは30演目あるが、各自が仕事を持つ身なのでふだんの稽古は週一程度。昭和59年に完成した鹿か塩しおの公民館で行い、衣装やカツラ、小道具その他、芝居に必要なものもここに保管する。 正午に始まる芝居はおよそ4時間続く。地元青年団作成の豆冊子には、あらすじや役者紹介のほか、おひねりを投げるポイントと、おひねり用の紙まで入っているので、誰でも「通」の気分で芝居見物できそうだ。「ろくべん」や「歌舞伎弁当」など地元食材をふんだんに使ったお弁当も予約できる。また地元の中学校には昭和50年に誕生した「歌舞伎クラブ」があり、毎年秋の学校祭で、生徒全員で歌舞伎を上演。新たな担い手が次代へと伝統をつなぐ大鹿歌舞伎は、今後も多くの人々を惹きつけ、輝き続けてくれるに違いない。平成24年10月21日(日曜日)正午~(16時終了予定)、無料8時より市場神社舞台で先着順に整理券を配布場所:鹿塩 市場神社舞台(大鹿村鹿塩393‐7)内容:(1)「義経腰越状(よしつねこしごえじょう )泉三郎館の段(いずみさぶろうやかたのだん)」(2)「一谷嫩軍記(いちのたにふたばぐんき)熊谷陣屋の段(くまがいじんやのだん) 」大鹿歌舞伎 秋の公演『大鹿村騒動記』■問合せ ☎0265-39-2100(直通)大鹿村教育委員会 担当:北村DVD発売中 4935円 販売元:東映株式会社・東映ビデオ株式会社発売元:セディックインターナショナル/講談社83nodule 2012 September長野県下伊那郡大鹿村̶四方を山に囲まれたこの村では、300年以上にわたって村歌舞伎の伝統が守られている。シカ料理店の主人、風祭善は長年主役を張ってきた。しかし、私生活では女房に逃げられ、ひとり暮らしをしている。公演を5日後に控えたある日、駆け落ちした妻・貴子と幼なじみの治が、ひょっこり村に帰って来た。貴子は認知症を患っているらしく、善の顔を忘れてしまっていた。その夜、成り行きで善は2人を泊めるが…。

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