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ここでは新旧と東西が絶妙に響き合う

マカオ 美食の交差点

文:芹澤和美 写真:伏木 博 取材協力:マカオ政府観光局、マカオ航空

東西文化が入り交じるカラフルな街並みや、歴史をしのばせる美しい世界遺産、豪華なホテルやエンターテインメント。
ともすると「カジノの街」の印象が強いマカオですが、ここ十数年で多様な魅力を持つ街に大変貌を遂げています。
そんなマカオでの大きな楽しみといえば、やはり「食」。
ユネスコの食文化創造都市にも認定されているこの街で、美食の万華鏡体験をしてみませんか。

アズレージョの道標に導かれ
南欧風情漂う歴史地区を散策
イエローにペパーミントグリーンにピンク……。マカオの中心部を歩いていると、鮮やかな色あいに思わず目がくらみそうになる。色彩を放っているのは、ポルトガル風の歴史建造物や民家、その軒先に咲く南国の花々。こんなカラフルな街は、地図を片手にぶらりと歩くのが楽しい。

マカオは、中国大陸から陸続きの半島部と、そこから3本の橋で繋がるタイパとコロアン、この2つの間を埋め立てたコタイ地区からなる。世界遺産の歴史建造物が点在するのは半島部。なかでも、モザイク模様の石畳が敷き詰められた「セナド広場」周辺は世界遺産が集中するスポットだ。前壁の漆喰彫刻が美しい「聖ドミニコ教会」、中国の風水思想が生かされた「盧家屋敷」、ステンドグラスに圧倒される荘厳な「大堂」。それらの狭間では、名物カレーおでんのテイクアウト店が香ばしい匂いを漂わせ、「涼茶舗」と呼ばれる漢方茶スタンドが道行く人の足を止めている。かわるがわる現れる東洋と西洋の風景は、ここが世界遺産エリアであることを抜きにしても面白く、カメラがひとときも手放せない。

とはいえ、一帯はマカオきっての繁華街のため、いつも地元の人と旅行者でごった返している。人ごみを避けてのんびりと散策するなら、南灣湖沿いに延びる遊歩道がいい。湖の向こうに、タイパに繋がる西灣大橋と高さ338mのマカオタワーを眺めるここは、街の人たちにも人気の散策路だ。道標となるのは、中国語とポルトガル語で道の名が記された「アズレージョ」と呼ばれるポルトガル風の装飾タイル。どんな小さな路地にもひとつひとつ名前があるから、地図と照らし合わせながら歩けば、迷うことはない。カラフルな壁を飾るアズレージョに導かれ、気ままに歩くのが楽しい。

こうした独特の風景を造りだしているのは、400年以上に亘るこの街の歴史だ。中国大陸の南東を流れる珠江の河口付近に位置するマカオに、東アジアでの交易拠点を求めてポルトガル人がやって来たのは16世紀中頃のこと。海あり丘ありと祖国によく似たマカオで、彼らは街を形成し、19世紀後半にこの地を正式な植民地とした。1999年に中国へ返還されてからは一大開発ラッシュとなり、今もその勢いは衰えないが、ポルトガル風情は失われることなく息づいている。ポルトガルと中国、新しさと古さ。その多様性は、もちろん食文化にも反映されている。古今東西が入り交じるマカオを体感するのなら、まずはおいしいものを食べることが、いちばんかもしれない。

(ノジュール2018年10月号からの抜粋です。購入希望の方はこちらをご覧ください。)
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