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こだわり1万円宿 第35回

旅ライターの斎藤潤さんおすすめの、一度は泊まってみたい宿を
「予算1万円」に厳選して毎月1宿ご紹介します。

長崎県

江島(えのしま)さとや

五島灘に浮かぶ離島で「手作り」の魅力に触れる

家族の縁に導かれて
こだわりの空間作り
佐世保から1日1便のフェリーで江島(えのしま)に到着すると、女将の福田智美さんが迎えてくれ、港近くの宿へ。今回は、15時40分に江島に到着し、翌朝8時半には佐世保へ戻る旅程。「ふつう、お客さんには2泊をお勧めしているので、到着した日はゆっくりしてもらうのですが」と言いながら、荷物を置くとすぐ島内観光に連れて行ってくれた。

2016年末に、両親の生まれた島に移住してきた福田さんは、翌年3月にさとやを開業し、その後ブルーベリー畑やひつじ牧場などを自力で開設し、体験滞在型の宿泊施設を目指している。

畑と牧場を見学してから、在校生4人の小中学校や黒い玉石と夕陽が美しい碁石浜などを巡った。

宿に戻り、屋根付の門をくぐって、板塀と生垣に囲まれた庭へ。2人掛けのブランコや手作りの木製椅子とテーブル、ピザ窯などがあり、その奥に宿泊棟の「ゲストハウスしげお婆」という看板が見えた。

福田さんの両親が都会に出ている間、家を守っていた親戚のしげさんの隠居所だった建物で、オバにちなんで命名した。玄関を入ってすぐに和室がある。本来は、ここと洋室の2間だったが、奥に6畳の和室を増築していた。

趣味のよいクロスの壁紙を張った部屋には、床の間と水屋風の空間があり、風合いが面白いクロスを張った天井は竹の桟が和の趣を強調していた。お隣の平島(ひらしま)の大工さんに手伝ってもらいながら、福田さんがデザインし、内装工事をしたという。

隣はシングルベッドの洋室で、昔からの備品だった歴史を感じさせる和箪笥や鏡台、屋根裏から出てきた革のトランクなどが置かれていた。なぜか懐かしさを感じさせる空間で、寛いでしまう。

昔の和室の裏は、電気ポット、電子レンジ、冷蔵庫、食器が少々ある小さな台所だが、本格的な自炊は難しそう。その先は渡り廊下で、風呂や食堂がある母屋とつながっている。渡り廊下は、この記事が掲載される頃には、ロビーのような落ち着いた空間に生まれ変わっている予定だ。

多彩だが飾らない、
家庭料理のぬくもり
そのうち、薪で沸かす風呂が焚きあがったと知らせてくれた。柔らかなお湯に浸かっていると、とろとろ沸いてくるので時々水でうめながらゆっくり入った。

風呂から上がると、夕食の準備ができていた。自前のビールをもって食堂へ行く。生簀からあげたてのヤズコの刺身、ヤズコのソテー、肉じゃが、キュウリとワカメの酢の物、カブとしめじとカニカマなどの煮物、ニンジン豚肉ピーマンの炒め物、サツマイモの天ぷら、それに、自家製野菜、ゆで卵、ツナなどのサラダと、期待していた以上の充実ぶり。家庭料理だというが、それがなによりだ。

焼きサンマと長芋のソテーと目玉焼き、クルミ豆腐と小松菜の白和えとソテーしたハムのエノキ巻きの3点盛り、サツマイモの天ぷらと水菜の味噌汁、リンゴと、朝食も手抜きがなかった。

さいとうじゅん●1954年岩手県生まれ。ライター。テーマは島、旅、食など。
おもな著書に『日本の島産業・戦争遺産』、『日本《島旅》紀行』、『島ー瀬戸内海をあるく』(第1〜第3集)、『ニッポン島遺産』、『瀬戸内海島旅入門』などがある。

(ノジュール2019年2月号からの抜粋です。購入希望の方はこちらをご覧ください。)
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