お悩み解決!旅するカラダ 第14回

ロコモティブシンドローム

「運動器の障害」により「要介護になる」リスクが高い状態である ロコモティブシンドローム(以下、ロコモ)を引き起こすのは、 関節痛や骨折などの整形外科的な病気ばかりではありません。

脳卒中の後遺症や心臓病にも気をつけなければなりません。そしてその最大の原因が動脈硬化です。

動脈硬化を招く危険因子とは

高血圧の人は、気温が下がる冬の露天風呂は要注意

動脈硬化の進行過程にはさまざまな危険因子が関与しています。 動脈硬化の予防と改善には、まずそれらを知ることが大切です。

危険因子を取り除き、 血管の病気を防ぐ脳の血管が破れたり、詰まったりする脳卒中を発症すると、たとえ運よく命をとりとめたとしても後遺症が残ることがあります。手や足が不自由になり、ロコモ状態となる人も少なくありません。

日本人の死亡原因の2位になっている心筋梗塞をはじめとする心臓病では、脳卒中の後遺症のように運動器の障害は現れませんが、外出や運動などに制約を受けることもあり、その結果としてロコモ状態になる危険性を高めます。

これらの病気の最大の原因が動脈硬化です。

では、どのようにして動脈硬化は起こるのでしょうか。

まず、血管の内壁が傷つくことから始まります。その原因は、高血圧やストレス、喫煙などさまざまです。

そして、血管の中を流れる血液中の悪玉コレステロールが、傷のできた部分に浸み込みます。悪玉コレステロールが活性酸素により酸化すると、これを異物と認識して攻撃するために集まってくるのが免疫細胞です。

この免疫細胞は貪食細胞ともいわれ、酸化した悪玉コレステロールを食べますが、満腹になった免疫細胞はその場で役割を終えて死んでしまいます。この死骸の集まりがプラークです。

プラークはやわらかな粥状で、中には壊れやすいものもあり、プラークが破裂したり、もともと血管が傷ついたりしたときは、それを修復しようとして、血液を固める働きをもつ血小板が集まってきます。それが血液の塊である血栓のもととなるのです。

プラークや血栓が血管の内側を狭め、最終的には詰まらせると脳梗塞や心筋梗塞を起こします。血栓がはがれて血管の中を流れていき、脳の血管を詰まらせるのが脳塞栓です。

このように血管の内壁がダメージを受けると血管自体のしなやかさも失われ、破れやすくなり、そこへ高い血圧がかかるとついには脳の血管が破れてしまいます。それが脳出血です。

動脈硬化は加齢によっても進行しますが、高血圧や喫煙、ストレス、運動不足、悪玉コレステロールの多い動物性脂肪、活性酸素などの危険因子を取り除くことが予防となります

活性酸素の除去が最大の予防法

危険因子の改善や排除が予防法となりますが、優先順位をつけるとするなら活性酸素の除去がもっとも効果的な予防法といえるでしょう

赤ワイン、お茶、そば… 食生活でも改善できる高血圧の治療には、さまざまな種類の降圧剤があり、血圧のコントロールは容易になってきました。ただし、血圧の高い人のほうが長生きするという報告もあります。高血圧でリスキーだけれど長生きするか、血圧をコントロールし、普段は安全だけれど短命か。あくまで統計のひとつですから、必ず全員があてはまるわけではありませんが、いずれを選ぶかは生き方の問題だと思います。医師が強要することではなく、あくまで患者さんが決めることです。

それでも、最高血圧が200、最低血圧が120を超えているようなら、さすがに治療が必要でしょう。

西洋薬のように血圧を下げるものはありませんが、漢方薬には、精神を安定させて、緊張などによる血圧の上昇を抑えるものがあります。顔色もよく元気な実証の人は釣藤散(チョウトウサン)、虚弱な虚証の人は七物降下湯(シモツコウカトウ)を飲んでください。

マナーだけでなく、血圧の急上昇を避けるためにもかかり湯を

喫煙やストレスは血管を傷つけるだけでなく、体内の活性酸素を増やします。活性酸素を除去するといわれているポリフェノールを含むブドウや赤ワイン、お茶、そばなどを積極的にとるといいでしょう。血液をサラサラにするというEPAやDHAを含む青背魚、血栓を溶かすナットウキナーゼを主成分とする納豆などもありますが、悪玉コレステロールを酸化させる活性酸素の除去が一番です。

もちろん、血管を広げ、血流を促すために体を温めることを忘れてはいけません。

旅先での注意点

高血圧の人が冬の温泉に入るときの注意点

熱い湯にいきなり入ると一気に血圧が上昇します。必ずかかり湯をしてから入ってください。お湯につかっていると、血管が広がり、今度は血圧が下がります。脱衣場の温度が低ければ、反動でいっきに血圧が上がりますから、入浴後はすぐに服を着ましょう。浴衣や薄着のままうろうろしないことです。飲酒後の入浴は季節に関係なく厳禁です。

(ノジュール2014年12月号からの抜粋です。購入希望の方はこちらをご覧ください。)
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