お悩み解決!旅するカラダ 第25回
肩や腰に痛みが出たとき、痛みの原因を知らないと正しい治療はできません。
筋肉による痛みなのか、関節を構成する骨や神経の痛みなのか、違いを理解しましょう。
中高年を悩ませる〝痛み〞
肩や首、腰、膝に痛みの現れる病気はさまざまあります。
加齢とともに発症率は高まり、病気を抱える人も増えていきます。
原因が筋肉、骨、神経のいずれにあるのかを見極めましょう。
痛みを引き起こす原因は?肩こりやいわゆる五十肩(ごじゅうかた)は双方とも筋肉に起こる異常が原因です。運動不足や長い時間、同じ姿勢でいることなどによって肩周辺の筋肉の血行が悪化し、こりや痛みとなって現れます。
五十肩は肩関節周囲炎と呼ばれ、筋肉や腱に炎症が起こる場合、肩関節の関節液の量が減り、関節包(かんせつほう)が縮こまって起こることも少なくありません。
骨と骨がつながっている部分が関節ですが、関節は関節包という潤滑油の入った袋に包まれています。関節包の中で関節の動きをなめらかにしているのが関節液です。この量が減ることにも血行不良が関与しています。
一般的に腰痛の中で多く見られるのが腰周辺の筋挫傷(きんざしょう)です。筋挫傷は、筋肉と骨をつなぐ腱が傷つくことをいいます。
一方、筋肉ではなく、神経への刺激が痛みの原因となっている代表的な病気が椎間板(ついかんばん)ヘルニアです。背骨は椎骨(ついこつ)と呼ばれる骨がつながってできており、椎骨と椎骨の間にはクッションの役割をしている椎間板があります。その椎間板がはみ出し、神経を刺激して痛みを発生させるのです。腰の部分の椎骨に起これば腰部椎間板ヘルニア、首に起これば頚椎(けいつい)椎間板ヘルニアとなります。
坐骨(ざこつ)神経痛という呼び方がありますが、これは症状を表しており、原因や病態を示すものではありません。椎間板ヘルニアや、椎間板の柔軟性の低下を原因とする変形性腰椎症などにより坐骨神経痛は引き起こされ、腰やお尻から足先に走る痛みやしびれを起こします。頚椎椎間板ヘルニアや変形性頚椎症では肩から手の指先までに現れるしびれや痛みを特徴としています。
中高年の膝痛といえば、変形性膝関節症が一般的です。膝の関節を構成する大腿骨(だいたいこつ)と脛骨(けいこつ)、膝蓋骨(しつがいこつ)の関節側にある軟骨が老化によって磨り減ると、軟骨というクッションなしに骨が直接あたるようになり痛みを発します。
そのほか、骨や関節の痛みを主な症状とする病気として、中高年は骨粗鬆症(こっそしょうしょう)に注意しなければなりません。女性の場合、骨粗鬆症は更年期以降に増えていきます。また、更年期の女性ホルモンの分泌低下によって起こる症状のひとつとして腱鞘炎(けんしょうえん)も見逃せません。
痛む部位別の予防法と治療法
原因が異なれば、治療法も異なります。
治療のメカニズムも知っておかなければなりません。
多くの場合、筋肉を鍛えることで予防が可能です。
筋肉を鍛えることの重要性筋肉の血行不良によるこりや痛みの場合、血流を改善することが予防や治療につながります。市販の薬で済ませる人もいることでしょう。薬局で販売している薬に湿布薬(冷湿布と温湿布)があります。まず、冷湿布は消炎効果や鎮痛効果があります。一方、温湿布はトウガラシの成分でもあるカプサイシンなどが配合されており、皮膚を刺激して血流を改善する効果があるわけです。つまり、双方ともにこりや痛みを緩和してくれます。
鎮痛薬は、筋肉、関節、神経の痛み、すべてに有効です。医療機関では、鎮痛効果のある内服薬や外用薬による薬物療法をはじめとして、温熱や電気、光線などの理学療法など、特に膝痛にはヒアルロン酸の注射を病状に応じて行ないます。ヒアルロン酸注射には膝関節の軟骨の表面をコーティングするイメージを持ってもらえるといいでしょう。痛みを改善する効果があります。ただし、ヒアルロン酸やグルコサミンなどを飲んだとしても、それが膝の軟骨まで到達するという証明はされていません。
筋肉や関節によるこりや痛みをお金に例えて患者さんに説明することがあります。収入よりも支出が多ければ、家計は破綻してしまうでしょう。体も同じで、筋肉が衰えてくると、負担に耐えられなくなります。たとえば、首や肩周辺の筋肉が衰えれば、重い頭を支えることはできなくなり、こりや痛みとなって現れるのです。
筋肉が衰えると、関節の正常な動きも阻害されます。変形性膝関節症はその典型例です。首や肩、腰、膝などの痛みの多くは筋肉を鍛えることで予防、改善ができます。簡単なものでかまいませんから、週に2、3回は直立してかかとを上げたり下ろしたり、スクワットをしたりして、足腰の筋肉を鍛えるように心がけて下さい。