いつまでも元気に旅しよう!病に勝つカラダ 第3回
いつまでも若々しく元気に活動したいし、旅行にも出かけたい。
そのために病気にならないカラダ作りを予防医学の観点から毎号お届けします。
日本人の4人に1人は、血管の病気で亡くなっています。
介護が必要となる認知症も、その要因には血管が関係します。
つまり、「血管」を若々しく保てば、健康と長寿に役立つのです。
血管の病気とは何か?血管を若々しく保つには、どうすればいいのか?
2回に分けてお届けします。
健康や寿命を左右するのは
「血管」年齢!2015年の人口動態統計(厚生労働省)によると、日本人の死因の一位はがん、二位は心疾患(心臓病)、三位は肺炎、四位は脳血管疾患(脳卒中)です。このうち、二位と四位はどちらも血管が原因の病気です。19世紀の内科医ウイリアム・オスラーは、「人は血管とともに老いる」という名言を残しました。その言葉が示すように、血管の状態が健康や寿命を大きく左右することが分かっています。 歳をとると、血管壁は弾力性がなくなって硬くなり、血管壁が厚くなって血液の通り道が狭くなります。これがいわゆる動脈硬化です。動脈硬化が進行すると、狭くなった血管で血栓が詰まったり、血管そのものが破れて出血したりして、脳卒中や心筋梗塞を引き起こします。血管の病気を防ぐには、動脈硬化の進行を抑制し、血管を若々しくしなやかに保つことが重要なポイントとなります。 動脈硬化は加齢とともに進行していくため、血管の老化現象とも言われています。その進行度合いは個人差があり、40代でかなり進行している人もいれば、年齢を重ねても実年齢より若い状態の血管を維持している人もいます。これまでの研究によると、高血圧や糖尿病のある人は、実年齢よりも血管年齢の加齢が進んでいるという報告もあり、血管が老化する原因は年齢による生理的なものだけではないのです。 血管の大切さを啓蒙している池谷敏郎先生によると、血管を木にたとえた場合に「枝葉」に相当する「末梢(まっしょう)」の血管を調べてみると、10〜20代でも老人のような血管年齢の患者さんがいるそうです。一方で、高齢の患者さんが、実年齢よりも10歳、20歳血管年齢が若く、体の隅々の血管がしなやかに開いて血流の良いケースもあるそうです。 血管年齢を左右するもの、それは毎日の食事や生活習慣。「何を食べるか」「どう食べるか」に気をつけることで、血管を若々しく保つことができます。また、池谷先生が考案した、血管年齢を若返らせる運動(次号で紹介予定)も効果大とのこと。 実際、池谷先生が指導した患者さんは血管年齢がどんどん若返っています。先生自身も、食事や生活習慣を見直した結果、30代の頃は実年齢よりも高かった血管年齢が、53歳(2015年6月当時)の頃には、実年齢よりも18歳も若返っていたそうです。
糖質とタンパク質が
血管力の鍵となる池谷先生がすすめる血管若返り術のポイントは〝適度な糖質制限〞です。 血圧、血糖値、中性脂肪、コレステロールの数値が異常だと、血管の老化は加速度的に進みます。このなかで、自分でコントロールできるのが血糖値。血糖値は食べた糖質の量で上昇します。糖質というと、砂糖や甘いお菓子などを想像しがちですが、実は主食(ごはん・パン・めん)が最も糖質を含んでいるといいます。 この血糖値コントロールに効果的なのが、池谷先生おすすめの「なんちゃって糖質制限」で、主食の量をそれまでの1/3〜1/2程度に抑える方法です。やり方は簡単。朝食、昼食では主食をとらずに卵や肉、魚介類、乳製品、大豆製品などのタンパク質や、野菜中心の食事にします。朝食では果物をとってもかまいません。そして、夕食でごはんやパン、めんなど、好きな主食をとります。 タンパク質をしっかりとるのは、それが血液循環を支えるふくらはぎなどの筋肉の原料になること、さらに血管の健康にタンパク質に含まれるアミノ酸が関連しているからです。リジンというアミノ酸は血管を丈夫にする働きがありますし、アルギニンというアミノ酸は血栓症の予防に役立ちます。 実際に何を食べればいいのか。池谷先生の食事を例にみると、朝はニンジンとリンゴのフレッシュジュースとヨーグルトなどで軽くすませ、昼食は肉とともに多くの野菜をサラダやスープでしっかりとり、夕食は炭水化物を控えめにして、ほかは好きなものを食べています。もちろん、絶対こうでないとダメというわけではなく、午前中から運動する日は朝から主食をとることもあり、その場合は夕食の主食を軽くして調節しているそうです。 なお、タバコは血管を老化させる最も大きな要因です。病気を気にする前に、まずは禁煙することが大事。その上で適度な糖質制限を。できることから始めましょう。
いけたに としろう●1962年生まれ。
東京医科大学医学部卒業後、同大学病院第二内科に入局。1997年より池谷医院理事長兼院長。
血管、血液、心臓など循環器のエキスパートとして、数々のテレビ番組に出演。
歯切れのいい医学解説が好評。
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