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高原の風もごちそうです

軽井沢・夏の朝食めぐり

文:坂本真由美 写真:橋本剛志

朝の散歩が心地いい 高原リゾートでの夏休み。
名店ひしめく美食の避暑地・軽井沢では、 朝食もまた楽しみのひとつです。
ゆったりと流れる時間と 清々しい空気もここではご馳走。
次の軽井沢は、朝の贅沢を 目当てに出かけませんか。

避暑地で
ニューイングランドの朝ごはん

キャボットコーヴ
木々の緑に埋もれるように佇む、まるで個人の別荘のような一軒が、軽井沢の朝食ブームの先駆け的存在「キャボットコーヴ」だ。ここは朝6時半からオープンしている朝食の専門店。扉を開けると、知り合いのお宅のような寛いだ雰囲気に心が落ち着く。アメリカのカントリースタイルのテーブルが設えられたテラスで、まずは高原の緑の空気を大きく吸い込もう。

こちらの朝食メニューは、オーナーの出口夫妻が今も毎年滞在するアメリカ・メイン州でその美味しさに感動したという料理がベース。とくにニューイングランド名物でもある具だくさんのクラムチャウダーは、ここでも人気の定番スープだ。キノコ形にぷっくりと膨らんだパン、ポップオーバーと一緒にいただこう。季節のフルーツやナッツが贅沢に練り込まれた厚みのあるパンケーキやイチゴのワッフルなども、ニューイングランドのクラシックなスタイルでファンが多い。

夫妻がかつてアメリカ旅行のなかで経験した朝食の幸せを、なんとか日本でかたちにしたいと願ってオープンしたこの店では、料理はもちろん、朝の特別なひとときと軽井沢ならではの自然を味わってほしいという。庭の木に架けられた巣箱に小鳥がやってくるのを眺めながら飲むコーヒーも格別だ。オープンから10年、すっかり軽井沢の朝には欠かせない名店となった。

森の中の名建築で過ごす
静かな朝時間

エロイーズカフェ
歴史ある建物の保存・再生の動きは軽井沢でも盛んだが、「エロイーズカフェ」もその流れのひとつと言っていい。明治時代から夏を軽井沢で過ごしてきた音楽教育家のエロイーズ・カニングハム女史が、青少年のために建てた合宿施設兼音楽ホール「ハーモニーハウス」。老朽化から取り壊しの危機もあったこの建物を4年前に再生し、保存プロジェクトの一環としてカフェとシェアハウスがオープンした。

軽井沢駅前に広がる大きなアウトレットモールのほど近くにありながら、このカフェのある一帯は落ち着いた別荘地。設計を担当したのは、カニングハム女史と親交のあった建築界の巨匠・吉村順三で、約千坪の森に佇む2階建ての木造建築は一幅の絵画のように美しく風格がある。低めの天井に吉村らしさを感じられるだろう。テーブルに着けば、窓一面に広がる森の風景に癒される。

朝食はコロコロとした姿が愛らしいエッグベネディクトがおススメだ。イングリッシュマフィンの上に信州産卵のポーチドエッグが乗って、濃厚な自家製オランデーズソースがとろりとかかる。フレンチプレスでサーブされるこだわりのコーヒーとともにいただけば、体の奥から目覚めていくのがわかるだろう。軽井沢の森に佇む名建築で過ごす朝の時間は特別だ。

(ノジュール2019年7月号からの抜粋です。購入希望の方はこちらをご覧ください。)
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