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山寺の名桜を目指して
京の里山・大原野へ
文=高島夢子(エディットプラス) 写真=橋本正樹、エディットプラス
平安時代初期に大原野神社が創建されて以来、多くの参詣客で賑わってきた大原野〈おおはらの〉。
京都盆地の西端、小塩山〈おしおやま〉の麓に広がり、平安時代には遊猟地として桓武天皇などの皇族が訪れた歴史的な土地で、地元の人にも愛される「名物桜」を目指します。
桜を愛した
西行ゆかりの名木京都の繁華街・四条から阪急電鉄で西へ。桂駅からバスに乗り継ぎ、揺られること30分、気が付けば周りにはのどかな田園地帯が広がっている。京都中心部とは趣の異なる牧歌的な風景に、これから出合うであろう桜の絶景に期待が膨らむ。バス停を降りるとゆるやかな上り坂を進み、「花の寺」として名高い勝持寺を目指す。
白鳳8年(679)、天武天皇の命によって役行者〈えんのぎょうじゃ〉が創建した勝持寺は、京都盆地を一望できる高台に立つ。平安時代末期の僧侶の歌人・西行〈さいぎょう〉が隠棲して、多くの花の歌を詠んだことでも知られており、西行が手植えしたとされる桜が有名だ。鐘楼堂の横に凜と佇む一本の桜こそが、彼の名前を冠した「西行桜」で、ひときわ目をひくその美しさは世阿弥〈ぜあみ〉の能楽作品でも表現されている。枝垂れ桜やソメイヨシノなど100本以上の桜によって山一帯が薄紅色に染められる春。まずはここから大原野の桜さんぽを始めよう。