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コンサートの楽しみ方
優雅な音楽体験を
マチネで気軽に
文=内海陽子・山口あゆみ・佐々木ゆり
クラシックコンサートといえば夜のイメージがありますが、近年どのホールも企画に力を入れているのが、昼間のコンサート(マチネ)。
ひとりでのんびりと、あるいは友人を誘ってランチを兼ねてなど、〝使い勝手〞のよいマチネ、おすすめです。
音楽に彩られる午後コンサートホールは、そこに身を置くだけで、豊かな気持ちになれる場所。会場へ向かうときのワクワクと華やいだ気持ちや、終演後の余韻を味わう時間までを含めてたっぷり楽しみたい。
近頃昼間のコンサート(マチネ)が充実していてうれしい。クラシック初心者も気軽に楽しめるプログラムや、いま注目されている旬な音楽家が登場する公演も多く、チケット代もお手頃。帰りの電車の時間を気にすることなく、ゆったりした気分でコンサートにのぞめて、前後にランチやアフタヌーンティーなど、1日を通して楽しめるのも良いところ。さっそく、日本を代表するコンサートホール、東京都港区にあるサントリーホールへ聴きにいってみた。
魅惑のサントリーホール
マチネ体験サントリーホールは1986年に誕生した〝東京初のコンサート専用ホール〞。伝説の指揮者カラヤンがベルリン・フィルハーモニー管弦楽団を率いて来日公演を行った際、「まるで音の宝石箱だ」と賞賛したという音響は、世界中のオーケストラにとっても憧れだという。
赤坂アークヒルズのビルを抜け、カラヤンの名を冠した石畳の広場を横切ると、サントリーホールのエントランスが見えてくる。正面入口の上壁にはパイプオルゴールが仕込まれていて、毎日正午と公演の開場時に姿を現す。かわいらしい人形が動き出しオルゴールが回転すると、華やかで重厚な音楽が流れ出す(演奏は1分ほど)。その音楽に導かれるように、ホール内へ。
深紅の絨毯、大理石の柱、マホガニーの壁、天井に輝く巨大なシャンデリア……、一気に別世界が広がるロビー(ホワイエ)。コンサートが行われる大ホールの扉は、その最奥に。自分の席はどこかと迷ったら、近くのスタッフに声をかければ丁寧に案内してくれる。車椅子の介助や多言語での対応もしてくれる彼らは、レセプショニストと呼ばれるコンサートサービスのプロだ。
大ホール。中央のステージをぐるりと囲むように、ワインレッドの客席が段々に広がっている。椅子も床も四方の壁にもオーク材が使われていて、音楽が染み込んだ木々に囲まれ、心が落ち着く。椅子の布地にはアンティークなぶどうの図柄が織り込まれていて、シックな雰囲気。正面には、世界最大級というパイプオルガンが聳そびえている。なんと5898本ものパイプからなり、その組み合わせによってさまざまな音色が出せるそうだ。どんなに迫力ある音が響きわたるのだろうか――。毎月1度お昼休みに、このパイプオルガンの演奏を聴くことができる。「サントリーホールオルガンプロムナードコンサート」だ。しかも入場無料。次回は12月22日に行われるので、興味のある方は、ぜひ(事前予約制)。
本日の公演は、「とっておきアフタヌーン」というオーケストラ名曲コンサートシリーズ。日本フィルハーモニー交響楽団とサントリーホールによる企画で、毎回、ソリストと指揮者の組み合わせが刺激的だ。