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姫路(兵庫県)
港町が育んだ、だしが要の関西おでん
文=中井シノブ 写真=宮川透
漁港として栄えた姫路や明石は、山海の幸に恵まれた町。
生姜醤油がアクセントの姫路おでん、瀬戸内の魚介の風味あふれる明石おでん。
素材の持ち味を生かしたおでんを堪能あれ!
鰹が香るだしもごちそう
生姜醤油でキリッと味変を日本一美しいとも評される白鷺城こと姫路城のお膝元・姫路市は城下町として栄えてきた歴史ある文化都市。瀬戸内海に面していることに加え、山や川など豊かな自然に恵まれたこの地ならではの、海の幸や山の幸を堪能できる。日本酒や醤油、塩、昆布といった和食に欠かせない食材の多くを地のものでまかなえるのも、この地の特徴だろう。
そんな姫路の冬のごちそうといえば、ルーツは昭和初期とも言われる生姜醤油をつけて食べる「姫路おでん」。専門店だけでなく、居酒屋などでも姫路おでんは人気のメニューで、姫路っ子は1年を通してこのおでんをお酒のおともにするという。
まず紹介するのは、姫路おでんの名を広めたといわれる、おでん処能古。開業25年の店を切り盛りする2代目女将は、「おでんに生姜醤油をつける食べ方は昔からあったのですが、2006年頃に姫路おでんと命名して町興しの起爆剤にしたんです。うちも当初から姫路おでんを食べられる店として紹介していただきました」と話す。
能古のおでんは、継ぎ足して使う鰹と昆布でとっただしで、つきたてのもちを入れた自家製もち巾着や甘辛く味老舗かまぼこ店の本店が点在するかまぼこ通りに店を構える小田原おでん本店は、小田原おでんの元祖的存在。古民家をリノベーションした店舗は、品のよい和の趣だ。
ここでは小田原のかまぼこ店11社がそれぞれ創作するおでん種や、小田原おでん種コンテストから商品化したもの、農家がおでん用にと特化して栽培する大根など、とことん地元にこだわったおでんが味わえる。だしは昆布とかつお節と塩のみ。そこに老舗かまぼこ店が作る練り物のうまみが合わさり、深くまろやかな味わいになる。
小田原名産十郎梅の梅肉と、地元の味噌蔵の白味噌を合わせた梅味噌で味わうのも特徴のひとつだ。