老後に備えるあんしんマネー学 第45回

さまざまな情報が飛び交うなか、老後資金に不安を抱えている人も多いのではないでしょうか。
お金を上手に管理して、老後を安心かつ心豊かに暮らすための、備えのマネー術を紹介します。

リバースモーゲージと
リースバック、どう違うの?

文=畠中雅子 イラスト=平田利之

CS 放送(通信衛星を利用した放送)を見る機会のある方は、「リバースモーゲージ」や「リースバック」のコマーシャルを目にする機会が多いのではないでしょうか。両者とも不動産に関する商品で、なんとなく似た感じの商品ですが、実は仕組みはまったく異なっています。そこで今月は、両者の基本的な仕組みを紹介しつつ、違いについてご紹介します。

リバースモーゲージは土地を
担保にお金を借りる仕組み
まずはリバースモーゲージについて説明します。リバースモーゲージは、自分が所有する不動産を担保にして、お金を借りる仕組みです。土地の価値を担保にするので、対象物件は主に一戸建てになります。一部の金融機関では、築年数が浅く、立地のよい物件であるなどのいくつかの条件を満たせば、マンションでも利用できますが、マンションを対象にするのは難しいのが現状です。また戸建てでも、借地権の場合は担保にできません。

リバースモーゲージを利用して借りられる金額は、土地の評価額の50〜60%程度が一般的。一気に限度額まで借りず、融資限度額を設定して、その枠内で必要な金額を追加で借りられる金融機関や、年金のように分割して受け取れる金融機関もあります。

リバースモーゲージの最大の特徴は、生前には利息部分のみを支払えばすむこと。元金部分の支払いは、契約が終了した時点で行います。

契約の終了は、契約者の死亡時になりますが、配偶者がいる場合は、配偶者が亡くなるまで契約を継続できます。契約が終了すると、担保として提供していた不動産を金融機関に渡すか、相続人が融資額を返済して、不動産を相続することになります。リバースモーゲージの場合は、亡くなるまで自分名義の家に住めて、死亡後は金融機関などに自宅が渡るのが一般的です。

マンションでも利用できる
リ・バース60
リバースモーゲージの一種として、住宅金融支援機構が民間金融機関を通して提供しているリ・バース60という商品があります。リ・バース60 も不動産を担保にするのはリバースモーゲージと同じで、融資限度額は担保評価額の50 〜60%程度。一戸建てだけではなく、マンションも担保にできます。

リバースモーゲージと違うのは、使途に制限がある点です。リバースモーゲージは、一般的に使途を限定しませんが、リ・バース60の場合は、自宅の建設資金や住宅ローンの借り換え資金、家のリフォーム資金のように、家に関連したものに限定されます。また、高齢者施設への住み替えで使えるのは、サービス付き高齢者向け住宅に限定されています。

リ・バース60が、住宅ローンの借り換えに利用できるのは意外かもしれませんが、住宅ローンの借り換え資金のニーズは高くなっています。年金生活で住宅ローンを払い続けるのは大変なので、リ・バース60で捻出した資金を使って住宅ローンを完済し、以降は利息のみの返済に変えるわけです。元本の返済はせず、利息のみの返済になるため、毎月の返済負担は軽減するケースが多くなります。

リースバックは自宅を売却し
家賃を払って住み続ける
次は、リースバックについて説明します。リースバックは、住まいを売却し、その後は賃貸契約を結ぶことで自宅に住み続けられるシステムです。売却によってまとまったお金が手に入るので、老後資金を増やせるほか、残っていた住宅ローンを完済したり、ほかにも借金があればそれも完済できます。また、不動産を手放すため、固定資産税の負担はなくなります。

ただし、売却後は家賃が発生するため、生活コストはアップします。住宅ローン完済済みの家をリースバックを利用して売却した場合、生活費に新たに家賃が加わるので、年金生活では赤字が出るケースも多くなるはずです。

また、売却時は1社のみの査定になるケースが多いため、市場価格よりも安い価格での売却になるのが一般的です。できるだけ高く買い取ってもらうために価格交渉を行い、仮に当初の提示額より高く売れたとしても、高く売れればその後の家賃設定が高くなるということも念頭に置きましょう。

はたなか まさこ
ファイナンシャルプランナー。
新聞・雑誌・ウェブなどに多数の連載を持つほか、セミナー講師、講演を行う。
「高齢期のお金を考える会」「働けない子どものお金を考える会」などを主宰。
最新刊『70歳からの人生を豊かにするお金の新常識』(高橋書店)など著書多数。

(ノジュール2024年7月号からの抜粋です。購入希望の方はこちらをご覧ください。)

ご注文はこちら