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井波彫刻・若狭塗・九谷焼・加賀水引細工・輪島塗
北陸の個性感じる
手仕事を訪ねて
民藝運動ゆかりの地・富山県南砺市、塗箸の生産量が全国の8割を占めるという福井県小浜市、加賀百万石文化が息づき、暮らしの中に伝統工芸が浸透する石川県金沢市。
大切に継承された伝統技術に出合い、手作り体験も楽しみます。
富山県南砺市
町全体が木彫刻の美術館
瑞泉寺と八日町通りを歩く富山県の南西部に位置する南砺市井波は、人口およそ8000人の町に、約200人の木彫刻師が暮らす木彫刻の町。「宮大工の鑿のみ一丁から生まれた木彫刻美術館・井波」として2018年に日本遺産に認定されている。その始まりは真宗大谷派井波別院瑞泉寺(以下、瑞泉寺)にある。
石畳の参道・八日町通りを歩くと、両脇に軒を連ねる彫刻工房からコンコンとノミを打つ木槌の音が聞こえてくる。至る所に七福神や十二支が飾られ、店先や軒下、植木鉢などに木彫りの猫が隠れている。通りそのものがまるで木彫刻の美術館のようだ。瑞泉寺に到着すると、堂々たる山門に迎えられる。正面の唐から狭間〈さま〉を見上げると、龍の彫刻が今にも動き出しそうだ。
瑞泉寺は明徳元年(1390)、本願寺5代綽如上人〈しゃくにょしょうにん〉によって開かれた寺院。これまで何度も火災に見舞われており、宝暦12年(1762)の大火災の後、再建のために派遣されたのが京都・東本願寺の御用彫刻師・前川三四郎。地元の宮大工・番匠屋9代目田村七左衛門らに京都の彫刻の技法を伝えたことから、井波彫刻が誕生したといわれている。山門の龍の彫刻は、その前川作の《雲水一疋龍》。井波彫刻の原点だ。
井波彫刻は立体的な彫りにより、生きて飛び出してくるかのような躍動感がある。寺社の装飾や住宅の欄間として発展してきたが、その技術を現代のライフスタイルに生かせる道具にして販売しているのが八日町通りの入口にあるショップ・季ノ実だ。モダンなデザインの中に温かみのある器やインテリア用品などが魅力的で、壮大な木彫刻が少し身近なものに感じられる。
城端地区の宿にチェックインした後は近所の寿司恵へ。新湊と金沢の市場から仕入れるというネタは絶品。地酒とともに堪能すれば、幸せいっぱいだ。