老後に備えるあんしんマネー学 第57回

さまざまな情報が飛び交うなか、老後資金に不安を抱えている人も多いのではないでしょうか。
お金を上手に管理して、老後を安心かつ心豊かに暮らすための、備えのマネー術を紹介します。

リフォームをすると
戻る税金、もらえるお金

文=畠中雅子 イラスト=平田利之

若いときに手に入れたマイホームが経年劣化をすることで、50代以降にリフォームの必要性が出るのはよくある話です。退職したら、全面的にリフォームをしようと考えている方もいると思いますが、退職金をあてにしすぎるプランは危険です。まとまったお金を受け取ると、気持ちが大きくなって、想定以上の費用をかけてしまうケースがあるからです。リフォームにはお金がかかる一方で、税金の還付や補助金が受けられるケースもあります。そこで今回は、リフォームに関連する税制と補助金をご紹介します。

リフォームローンを
利用すると
残高の0・7%の
所得税が戻る
まずは、リフォームに関する税制からご紹介しましょう。マイホームを買ったときには住宅ローンを利用して、住宅ローン控除を受けた方も多いはずです。リフォームの場合でも一定の条件を満たせば、住宅ローン控除が受けられます。

リフォームで住宅ローン控除が受けられるのは、10年以上の返済期間のリフォームローンを借りたことや、リフォーム後の床面積が50㎡以上であることなど、いくつかの条件をクリアした場合です。住宅ローン控除の控除率は、マイホーム購入の際と同じ条件で、年末のローン残高の0・7%になります。年末の住宅ローン残高が600万円の場合、所得税から4万2000円が還付される計算です。

なお、還付されるのは納めている所得税が上限額になります。計算上では還付額が4万2000円になっても、納めている所得税が3万円の場合、還付される所得税は3万円が限度になります。

ただし、所得税では取り戻しきれなくても、上限9万7500円までは翌年の住民税を引き下げることができます。前述の例では、所得税からは3万円までしか還付されませんが、翌年の住民税が1万2000円安くなります。

現金でのリフォームでも条件次第で減税の対象にマイホームを購入した際は住宅ローンを借りることが前提条件でしたが、リフォームの場合はローンを利用した場合でも、しない場合でも、リフォームの目的によっては、「リフォーム促進税制」の対象になります。

リフォーム促進税制とは、耐震リフォーム、バリアフリーリフォーム、省エネリフォーム、三世代同居リフォーム、長期優良住宅化リフォームなどを促進するために設けられている減税制度。これらの目的に合ったリフォームをした場合、対象工事限度額までは、標準的な工事費用とみなされる金額の10%を所得税から控除できます。例えば、バリアフリーリフォームを行い、標準的な工事費用が100万円の場合、その10%に当たる10万円が所得税から控除されます。

対象工事限度額を超えた分に関しても、一定の条件に当てはまれば、工事費用の5%の控除が受けられます。

住宅ローン控除、リフォーム促進税制とも、納める税金から直接控除される「税額控除」となっているため、節税効果の高い制度といえます。ただし、住宅ローン控除が所得税、住民税にわたって軽減される制度に対して、リフォーム促進税制は、所得税のみの減税制度になっています。

はたなか まさこ
ファイナンシャルプランナー。
新聞・雑誌・WEBなどに多数の連載をもつほか、セミナー講師、講演を行う。
「高齢期のお金を考える会」「働けない子どものお金を考える会」などを主宰。
『70歳からの人生を豊かにするお金の新常識』(高橋書店)など著書多数。

(ノジュール2025年7月号からの抜粋です。購入希望の方はこちらをご覧ください。)

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