老後に備えるあんしんマネー学 第60回

さまざまな情報が飛び交うなか、老後資金に不安を抱えている人も多いのではないでしょうか。
お金を上手に管理して、老後を安心かつ心豊かに暮らすための、備えのマネー術を紹介します。

金利上昇の影響を受けて
定期性預貯金の最新金利事情

文=畠中雅子 イラスト=谷山彩子

NISAの利用者増や好調に推移する株式市場などの影響により、預金から運用商品へとシフトしている世の中ですが、金利上昇の影響を受けて、定期性預貯金(定期預金)や個人向け国債などの金利がジワジワと上がってきています。50代以降は運用に目を向けつつも、安定した預金類で資産を守ることも大切です。そこで今月は、最近の定期預金などの事情をご紹介します。

受け取り利息では
3倍以上の差が出ることも
定期預金の金利が、金融機関ごとに異なることは言うまでもありませんが、金利上昇の影響を受けて、金融機関ごとの金利差が広がっています。

一例を挙げると、某メガバンクの1年もの定期預金の金利は、8月末現在0・275%になっています。これに対して、地方銀行のインターネット専用支店では、1年もの定期預金に1%の金利を付けているところもあります。預金にすることを「資金を寝かせる」と揶揄されるケースもありますが、仮に資金を寝かせるとしたら、少しでも金利の高い預金商品を利用ことが重要だと思います。

金利が高めの定期預金を扱うことで知られている銀行の例として、香川銀行のセルフうどん支店、愛媛銀行の四国八十八カ所支店、トマト銀行のももたろう支店の、3つの地方銀行の定期預金をご紹介します。下の表にあるとおり、3つの銀行ともメガバンクの定期預金に比べると、かなり高い金利を付けています。インターネット専用支店なので、居住地に関係なく預けられるのも魅力です。

例えば100万円をメガバンクの定期預金に0・275%で預けた場合、1年後に受け取れる利息は、税引き後で2191円です。これに対して、同じ100万円を1%の金利で預けた場合は、1年後の利息は同じく税引き後で7969円になります。1年間の預け入れで約3・6倍も、手取り額が変わってきます。

値動きのある金融商品は、認知症発症後に換金しづらい1%程度では運用に勝てないという考え方もあると思いますが、高齢期に向けた資産の保有状態として、運用商品にシフトをしすぎるのは危険です。認知症と診断されると、契約が結べなくなるため、後見人を立てなければ、運用商品の換金は原則としてできなくなるからです。

あわせて、株式や投資信託のように値動きのある金融商品は、後見人が付いても換金を避ける傾向にあり、仮に後見人が換金に動いても、裁判所が換金を認めるとは限りません。また認知症発症後の運用商品の換金条件については、証券会社ごとに規定がまちまちで、個別に問合せをするしか実態がつかめない現実もあります。

実際のご相談者で、億を超える資産をもっていたのに、そのほとんどが運用商品だったために、換金がうまく進まず、お金がありながら希望する有料老人ホームに入居できなかった方もいます。そのため、高齢期に差しかかったら、定期預金のように、値動きのない金融商品をある程度確保しておくことも大切です。

はたなか まさこ
ファイナンシャルプランナー。
新聞・雑誌・WEBなどに多数の連載をもつほか、セミナー講師、講演を行う。
「高齢期のお金を考える会」「働けない子どものお金を考える会」などを主宰。
『70歳からの人生を豊かにするお金の新常識』(高橋書店)など著書多数。

(ノジュール2025年10月号からの抜粋です。購入希望の方はこちらをご覧ください。)

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