人気の特集

ふるさと納税の達人に聞いた

お得なだけじゃない!
ふるさと納税で広がる楽しみ

文=編集室りっか イラスト=MAKO オケスタジオ

ふるさと納税はお得なことに注目が集まりがちですが、それだけではありません。
税と地方に関心をもつきっかけを作り、大切な人と楽しい時間を過ごすためのツールなのです。

――飛田啓介さんがふるさと納税を始めたのは社会人1年目だった2013年。当時、ふるさと納税は誰もが知るものではなかったが、職場の先輩に教わってやってみたという。総務省の資料によると2013年度のふるさと納税受入件数は約42万7000件。2024年度は約5878万7000件だから、受入件数でいえば約140倍の規模に拡大した。2013年から毎年欠かさずふるさと納税を利用し、2019年からは仕事として関わってきた飛田さんに、ふるさと納税の魅力について聞いた。

ふるさと納税で地方を知り日本の将来を考える利用者にとって、ふるさと納税といえば、返礼品がもらえる、所得税と住民税の控除が受けられるという経済的にお得であることが真っ先に思い浮かぶと思います。ですが、ふるさと納税で得られることはそれだけではありません。

私は東京生まれで、ずっと東京に住んでいるので、学生時代は地方に関心をもつことはほとんどありませんでした。社会人となり日本各地に興味をもち、もっと知りたいと思うようになったのは、仕事や旅行で地方に行く機会が増えたこともありますが、ふるさと納税の影響も大きいと感じています。返礼品を選びながら、それまで知らなかった遠い町や村に行ってみたいと思うことも多いですし、仕事で出かけた先で、ここの特産品は〇〇だなと、親しみを感じることもよくあります。

税金について考えるきっかけにもなります。ふるさと納税では自らの意志で寄附先を選ぶことができ、さらに、多くの自治体で税金の使い道を選ぶこともできます。総務省によれば、寄附の使途を選択できるようにしている団体(都道府県、市区町村)は全体の98%です(2024年度)。納税者が自分の納める税金の使い道を選べる制度は日本ではふるさと納税だけといっていいでしょう。税の使い道について考えることは、地方の将来、日本の将来について考えるきっかけになり、これはとてもいいことだと思っています。

ライフステージで変わる返礼品の楽しみ方とはいえ、ふるさと納税の一番の楽しみは、やはり返礼品ですよね。私自身は、ライフステージの変化とともに選ぶ返礼品も変わりました。独身のころは友達と飲み会をするときに焼き肉用の肉やビールを頼んでいました。ふるさと納税でもらった高級な肉があるとみんな喜びますし、飲み会も盛り上がります。結婚して子どもが生まれてからは、子どもや妻が喜ぶフルーツが多くなりました。共働きなので、最近は骨がとってあるサバの切り身など、簡単に夕飯のおかずになるものを選ぶことも多いです。

振り返ってみると、自分ひとりで楽しむのではなく、家族や友達と一緒に楽しめるものを選ぶというのは一貫していますね。趣味のものなど自分だけで楽しむものは、お金を払って買えばいい、ふるさと納税は大切な人と楽しむために利用するというのが私の考えです。

ふるさと納税は控除が受けられて得であるという文脈で語られることが多いですが、ほかの税制優遇制度と決定的に違うのは、返礼品という〝物〞が届くということ。返礼品を中心に楽しいコミュニケーションが生まれて、幸せな時間を過ごせる。私はそれがふるさと納税のいいところだと思っています。仕事としてだけでなく、自分の身近な大切な人たちに「ふるさと納税をやったほうがいいよ」と自信をもってすすめているのは、これが理由です。ふるさと納税は幸せな時間を作るツールなのです。

飛田 啓介〈とびた けいすけ〉
20以上のふるさと納税サイトを一括で検索・比較できるWEBサイト「ふるさと納税ガイド」編集長。
ファイナンシャルプランナー。
ふるさと納税の専門家であり、筋金入りの愛好家。

(ノジュール2025年11月号からの抜粋です。購入希望の方はこちらをご覧ください。)

ご注文はこちら