人気の特集
河津桜と雛まつり
金目鯛で華やぐ伊豆の春
文=スケープス 写真=入江啓祐
南伊豆、河津をはじめ河津桜が伊豆半島に春の色を差す季節、
稲取では港町らしい素朴なつるし雛のまつりが文字通り花を添えます。
川をピンク色に縁取るような河津桜の並木道。春早い南伊豆の青野川沿いの桜並木は2月初旬には花を咲かせ始める。低く枝を広げる木が多いので、遊歩道を歩いていると、桜に包まれているような気分になる。桜の足元に咲く菜の花の黄色がまぶしい。
南伊豆から北上し、河津桜の原木がある河津町へ。河津川沿いには850本もの桜が咲いている。桜の背後には伊豆の山の緑。まだ2月とはいえ、天気の良い日の伊豆は陽光がぽかぽか気持ちがよい。遊歩道沿いには桜の花びらをあしらった桜餅、さまざまなみかん、伊豆の山育ちのワサビなどご当地の名物を売る露店が並び、春のおまつり気分も盛り上がる。
春のおまつりといえば、雛まつり。河津町の隣、稲取は、山形県・酒田、福岡県・柳川と並ぶ日本三大つるし飾りのひとつである「雛のつるし飾り」で有名だ。河津桜が咲く頃には、雛のつるし飾りまつりもスタートしている。
雛のつるし飾りとは雛段の両脇に糸でつなげた人形を飾る風習のこと。江戸時代の発祥と伝えられる。かつて雛人形は裕福な家庭でしか飾れない高価なもの。一般家庭の母親や祖母、親戚や近所の奥さんまでがお古の着物の端切れを持ち寄り、生まれてきた女の子の健康と幸せを祈って、小さな人形をつくり、紐でつなぎ飾ってきた。うさぎ、花、巾着、這い子人形など縁起のよいモチーフの小さな人形は、子どもを見守る大人たちの愛情の証だ。
稲取文化公園雛の館は、4カ所ある雛のつるし飾りまつりのメインとなる会場。華やかな色の布でつくられた人形が天井からいくつも下がり、華やかだ。また、小高い丘の中腹にある素盞嗚〈すさのお〉神社では毛せんを敷いた118段の階段に雛人形が飾られ、両脇を雛のつるし飾りが彩る様は圧巻だ。
伊豆の漁港は日本有数の金目鯛の水揚げ高を誇る。稲取漁港直売所こらっしぇでは、鮮度抜群で味も最上級の「稲取キンメ」を手に入れることができる。雛まつりのご馳走にぴったりの魚だ。河津桜、雛のつるし飾り、金目鯛。華やかなピンクと朱が重なり合う伊豆の里で、一足早い春時間を過ごしてみよう。