老後に備えるあんしんマネー学 第28回

さまざまな情報が飛び交うなか、老後資金に不安を抱えている人も多いのではないでしょうか。
お金を上手に管理して、老後を安心かつ心豊かに暮らすための、備えのマネー術を紹介します。

医療費控除と
セルフメディケーション税制は
どちらを利用するのが
有利ですか?

文=畠中雅子 写真=平田利之

さまざまな情報が飛び交うなか、老後資金に不安を抱えている人も多いのではないでしょうか。
お金を上手に管理して、老後を安心かつ心豊かに暮らすための、備えのマネー術を紹介します。

もうすぐ、自営業者の確定申告がスタートします。自営業者や副業の収入がある方などは、2月16日から3月15日までに前年の1年間に得た収入と、その収入を得るのにかかった経費を計算して、必要な税金を納めることになります。この期間に行う確定申告は、所得税等の申告になりますが、確定申告書の2枚目は、住民税の申告書になっています。所得税の確定申告を行うと所得が確定するので、6月から支払うべき住民税額を自治体が計算して、新しい税額を6月から納めることになります。

医療費を多く支払ったら
年金生活者も確定申告を
確定申告は自営業者などが行うものだと書きましたが、年金生活をしている方でも、確定申告をしたほうが良いケースがあります。それは、源泉徴収の形で所得税を納めていて、医療費がたくさんかかっていたり、バリアフリーなどのリフォームでまとまった費用がかかった場合などです。

ここからは医療費がたくさんかかったご家庭が、申告できる医療費控除についてご紹介します。

医療費控除は、年間で10万円を超える医療費を支払ったり、所得の5%を超える医療費を支払った場合に申告できる制度です。例えば、医療費が1年間に20万円かかっていて、差し引く金額が10万円の場合、10万円が医療費控除額になります。

ただし、年金のみの収入の方は、「所得の5%」を適用させたほうが有利になるのが㆒般的です。ここでいう所得とは、年金収入から公的年金控除を差し引いた金額を指します。

65歳以上の方の公的年金控除額は、110万円が適用されるケースが多くなります。例として、収入は公的年金のみで金額が200万円の方は、公的年金控除の110万円を引いた90万円が「所得」に当たります(下図参照)。医療費から差し引くのは所得の5%でいいので、90万円×5%=4万5000円を差し引けばすみます。所得の5%を使うと、10万円を差し引く場合に比べて、5万5000円も医療費控除額を増やせるのです。

医療費控除の特例と
選択制で申告できる
医療費控除にはもうひとつ、特例に当たる「セルフメディケーション税制」という制度があります。この制度は、健康診断や予防接種などを受けている人が、年間で1万2000円を超えるスイッチOTC医薬品を購入した場合に申告できる制度です。健康診断は、自治体で行われている無料の健診も対象になります。セルフメディケーション税制の控除額は、8万8000円が上限額になっています。

ちなみにスイッチOTC医薬品とは、本来は処方箋が必要な医療用の医薬品のなかから、副作用が少ないなどと考えられたものを、ドラッグストアなどで買えるように転用した医薬品のこと。お店で薬の箱を手にした時、「セルフメディケーション税 控除対象」と、主に青字で印刷されているものが、該当する医薬品になります。スイッチOTC薬品の品目を知りたい場合は、厚生労働省のホームページで「スイッチOTC医薬品の対象品目」のリストを探してみると良いでしょう。

はたなか まさこ
ファイナンシャルプランナー。
新聞・雑誌・ウェブなどに多数の連載を持つほか、セミナー講師、講演を行う。
「高齢期のお金を考える会」「働けない子どものお金を考える会」などを主宰。
『ラクに楽しくお金を貯めている私の「貯金簿」』(ぱる出版)など著書多数。

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