老後に備えるあんしんマネー学 第29回

さまざまな情報が飛び交うなか、老後資金に不安を抱えている人も多いのではないでしょうか。
お金を上手に管理して、老後を安心かつ心豊かに暮らすための、備えのマネー術を紹介します。

定年以降も働きたい場合
知っておきたいお金の話

文=畠中雅子 写真=平田利之

さまざまな情報が飛び交うなか、老後資金に不安を抱えている人も多いのではないでしょうか。
お金を上手に管理して、老後を安心かつ心豊かに暮らすための、備えのマネー術を紹介します。

年金制度の改正によって、昭和36年4月2日以降に生まれた方は、公的年金を65歳になるまでもらえません。そのため60歳前後で定年退職を迎えても、継続雇用制度を利用して働いたり、再就職する方が多くなっています。

年金の受給開始年齢が引き上げられているために、働き続けなければならない現実を受け、高齢者雇用に関する法律が整備されています。その法律とは、高年齢者雇用安定法といい、具体的には、「定年制の廃止」や「70歳までの就業機会確保」などが盛り込まれています。働きたいか、仕方なく働くかは家庭の事情によって異なると思いますが、定年以降も働くのがポピュラーな時代を迎えています。そこで今月は、定年以降も働く場合に知っておきたい制度などをご紹介します。

60歳以降に減収になるともらえる
高年齢雇用継続基本給付金
定年退職後に同じ会社で働き続けられても、収入は半分から3分の1くらいに下がるのが一般的です。

収入が下がることは覚悟していても、現実的には急激に下がるとやりくりは大変です。家計支出を大きく見直す必要も出てきます。急激な減収を補うために、雇用保険には「高年齢雇用継続基本給付金」の制度が設けられています。

高年齢雇用継続基本給付金は、60歳以降も雇用保険の被保険者として働き続ける方向けの制度。60歳に到達した時点の収入に比べて、それ以降の収入が75%未満に減っている場合に、65歳になる前月まで給付金がもらえます。給付金額は賃金の低下率によりますが、下がったあとの収入の15%程度をもらえる人が多くなっています。他の条件を満たしており、60歳以降の収入が28万円だとすると、ひと月の給付金額は4万2000円。給付金は2カ月分ずつ、指定口座に振り込まれます。

年金をもらいながら働くと
年金は減ってしまう?
また64歳までの方ですでに年金をもらっていたり、65歳を超えても働かれている方は、「在職老齢年金」の制度も理解しておく必要があります。在職老齢年金は、年金(月額)と給与の合計額がひと月47万円を超えると、年金の一部がカットされる制度です。この47万円の中には、前年度のボーナスも含めるため、給与にボーナス(12分の1)と年金を加えると、47万円を超えるケースもあります。

以前の在職老齢年金制度では、64歳までの方は収入と年金の合計額が28万円を超えたところから年金のカットが始まっていましたが、令和4年度の改正によって、現在では年齢に関わらず、年金のカットが始まる金額は47万円に統一されています。

はたなか まさこ
ファイナンシャルプランナー。
新聞・雑誌・ウェブなどに多数の連載を持つほか、セミナー講師、講演を行う。
「高齢期のお金を考える会」「働けない子どものお金を考える会」などを主宰。
『ラクに楽しくお金を貯めている私の「貯金簿」』(ぱる出版)など著書多数。

(ノジュール2023年3月号からの抜粋です。購入希望の方はこちらをご覧ください。)
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