老後に備えるあんしんマネー学 第34回

さまざまな情報が飛び交うなか、老後資金に不安を抱えている人も多いのではないでしょうか。
お金を上手に管理して、老後を安心かつ心豊かに暮らすための、備えのマネー術を紹介します。

老後資金の管理方法を考えたことがありますか?

文=畠中雅子 イラスト=平田利之

老後資金は貯めるのも
適度に使うのも難しい
老後資金のことを考えた時に不安なのは、「自分の寿命が尽きる前に資金が底を突いてしまわないか」ではないでしょうか。老後資金が減るのがコワくて、節約の努力を重ねた結果、何千万円もの老後資金を残したまま、亡くなられる方は少なくありません。

老後資金をしっかり貯めた方からも、ご相談の現場でいろいろな声を聴いています。例えば、リタイアしたら世界中を旅して回りたいと思っていたのに、先送りにしているうちに、海外旅行を楽しめる健康状態ではなくなって後悔しているという方がいます。ほかにも、晴耕雨読を夢見て、田舎暮らしを始めたものの、健康状態に問題が生じて、都会暮らしに戻り、田舎に新築の家を建てたことを後悔している人もいます。

老後資金は貯めるのも難しいですが、適度に減らしていくことも、難しいことがお分かりいただけるでしょう。そこで今月は、老後資金の管理方法について考えます。適度に減らしていくことも、難しいことがお分かりいただけるでしょう。そこで今月は、老後資金の管理方法について考えます。

年金生活では特別支出の
負担が重くのしかかる
収入が年金のみの生活に入ると、現役時代のようにお金を使えなくなります。とはいえ年金暮らしも数年が経過すると、食費や日用品費などの買い物は、年金収入に合わせた支出に収まるものです。近年は電気代の高騰に悩まされているものの、公共料金についても、多くのご家庭で節約の努力をされています。

日々の暮らしは年金収入に合わせて抑えられるのに、老後資金が想像以上に減る原因は、固定資産税や自動車税、家の修繕費用、家電の買い替え費用など特別支出がかさむこと。現役時代はボーナスでまかなっていたご家庭ほど、特別支出の負担をきつく感じる現実があります。

高齢期には健康保険の
効かない医療費が増える可能性も
特別支出のほかにも、老後資金を減らす原因に、医療費や介護費用といった、予測不能な支出が挙げられます。医療費については、入院しても高額療養費制度によって負担が軽減されるため、高齢期でもあまり心配をしていない方もいますが、健康保険の対象になる治療だけを受けられるわけではありません。

例えば、白内障の多焦点(二焦点や三焦点)レンズの再建術、インプラント治療、補聴器の購入のように、健康保険の対象にならない費用がかかる人はたくさんいます。入れ歯に比べて安定性のあるインプラント治療ですが、歯周病などで歯茎が弱ってくると、再度、治療が必要になるケースもあります。補聴器や老眼鏡なども、聴力や見え方の変化によって、買い替えが必要になるケースも多いでしょう。

はたなか まさこ
ファイナンシャルプランナー。
新聞・雑誌・ウェブなどに多数の連載を持つほか、セミナー講師、講演を行う。
「高齢期のお金を考える会」「働けない子どものお金を考える会」などを主宰。
『ラクに楽しくお金を貯めている私の「貯金簿」』(ぱる出版)など著書多数。

(ノジュール2023年8月号からの抜粋です。購入希望の方はこちらをご覧ください。)
ご注文はこちら