老後に備えるあんしんマネー学 第41回

さまざまな情報が飛び交うなか、老後資金に不安を抱えている人も多いのではないでしょうか。
お金を上手に管理して、老後を安心かつ心豊かに暮らすための、備えのマネー術を紹介します。

60歳以降も働く人が受け取れる
高年齢雇用継続基本給付金

文=畠中雅子 イラスト=平田利之

60歳で定年を迎えても、それ以降も働くのがポピュラーな時代になっています。定年以降は収入が大きくダウンするのが一般的ですが、継続雇用などで働き続ける場合、「高年齢雇用継続基本給付金」が受け取れます。高年齢雇用継続基本給付金は、雇用保険に加入する形で働き続ければ、65歳になるまで受け取れるお金です。収入減を補ってくれる高年齢継続雇用基本給付金について、受け取れる条件や給付額などをご紹介します。

60歳以降の賃金が
75%未満なら給付金がもらえる
高年齢雇用継続基本給付金は、60歳到達時点の収入(以下、賃金)に比べて、それ以降の賃金が75%未満に下がった人に支給されるお金です。これを受け取れる条件は、右の賃金低下率に加えて、次の条件も加わります。

  • 60歳以上65歳未満の雇用保険の一般被保険者であること。
  • 再就職して働く場合も、失業手当(雇用保険の基本手当など)を受け取っていないこと。
  • 雇用保険の被保険者であった期間が通算で5年以上あったこと(再就職の場合は、離職の翌日から再就職までの期間が1年以内なら通算可能)

高年齢雇用継続基本給付金の支給額は、賃金の「低下率」に応じて決まります。多いパターンとして、賃金が61%以下に下がった場合は、60歳以降の賃金の15%が受け取れます。

たとえば賃金の低下率が61%以下で、60歳以降の賃金が30万円なら、30万円×15%=4万5000円。60歳以降の賃金が20万円であれば、20万円×15%=3万円がひと月の給付金額になります。受給している途中で賃金に変更があれば、給付金も変動します。給付金は2ヵ月ごとに、指定の口座に振り込まれます。

ただし、2025年4月以降に60歳を迎える人から給付率が10%に縮小されるなど、高年齢雇用継続基本給付金は段階的に縮小され、将来的には廃止される予定になっています。

65歳までの特別支出は、給付金を計画的に使う定年を迎えたあとは継続雇用などで働いても、収入はガクンと下がるために、赤字が発生するご家庭が多くなります。また、ボーナスが出ている場合でも、現役時代に比べると大幅に減ってしまいます。ボーナスをあてにして、固定資産税や自動車税などの特別支出を支払っていたご家庭は、貯蓄から捻出する支出が多くなってしまうので注意が必要です。

年金暮らしに入ってからは、貯蓄から特別支出を支払うしかありませんが、高年齢雇用継続基本給付金を受け取っている間は、この給付金を計画的にプールして、特別支出の一部に充ててはいかがでしょうか。給付金が受け取れる期間は、給付金を計画的に使って、赤字を抑えるのです。

高年齢雇用継続基本給付金は、給与振込口座とは別の口座を振込み先に指定することも可能です。給与振込口座に入金されると、いつのまにか生活費で消えてしまいがちです。そこで、別口座を振込先に指定して、いったんはプールしたうえで、特別支出に充てることをおすすめします。

はたなか まさこ
ファイナンシャルプランナー。
新聞・雑誌・ウェブなどに多数の連載を持つほか、セミナー講師、講演を行う。
「高齢期のお金を考える会」「働けない子どものお金を考える会」などを主宰。
最新刊『70歳からの人生を豊かにするお金の新常識』(高橋書店)など著書多数。

(ノジュール2024年3月号からの抜粋です。購入希望の方はこちらをご覧ください。)

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