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緑滴る高原リゾートで日帰り避暑の旅

軽井沢【長野県】

文=若宮早希 写真=山田大輔

都会の熱気と喧騒から逃れ、避暑地・軽井沢へトリップ。
明治時代から別荘地として愛されてきた高原リゾートは、今、新たな施設の誕生でますます賑わいを見せています。
軽井沢の“旬”に出合う、今行きたい夏旅へ。

清涼感に包まれた
自然スポットへ
軽井沢は、今もなお噴煙を上げる浅間山の山麓に広がる標高約1000mの高原地帯。雄大な山岳風景に、森の中に点在する湖沼や滝、そして緑に囲まれた西洋風の別荘群……。軽井沢の美しい高原風景は、芸術家や文人、政財界人など、あまたの名士たちを魅了してきた。

軽井沢の別荘地としての歴史は古く、その始まりは明治19年(1886)に遡る。カナダ人宣教師のアレキサンダー・クロフト・ショーは、かつて中山道の宿場町だった軽井沢宿を訪れ、ひと夏を過ごしたそう。高原ならではの冷涼な空気と広大な草原地帯……。この地に魅了されたショーが旧軽井沢に小さな別邸を構えたことをきっかけに、次々と在留外国人の別荘が建てられた。そうして根付いた西洋文化が、「高原リゾート」としての軽井沢の礎を築いたという。

軽井沢駅に降り立つと、山から下りてきた涼やかな空気に胸がすっと空いた。東京と比べ、年間の平均気温が8℃近く低いという軽井沢は、日常から離れ、心身ともに癒やされる「リトリート(転地療養)」という言葉がぴったりの保養地だ。まずは自然を求め、白糸の滝を目指すことにした。

白糸の滝へは、軽井沢駅から路線バスでアクセスでき、軽井沢の中心地である旧軽井沢エリアからもバスでわずか20分ほど。有料道路の白糸ハイランドウェイに入ると、車窓の景色は市街地から瑞々しい新緑へと変わっていった。バス停から白糸の滝までは、150mほどの遊歩道を行く。透き通った小川の清水や岩肌を覆う苔など、涼やかな光景を目で楽しみながら歩けば、滝壺まではあっという間。幅約70mもの岩壁から浅間山の伏流水が流れ落ちる白糸の滝は、まるでたゆたう絹のカーテンのような美しさだ。

白糸の滝を後にして旧軽井沢エリアを訪れると、観光地らしい賑わいに心が躍る。人気ベーカリーが手がける焙煎所・沢村ロースタリー 軽井沢は、自家焙煎コーヒーだけでなく、サンドイッチや焼菓子も味わえる店として評判だ。フットワークの軽い日帰り旅なら、パンとコーヒーをテイクアウトして、手軽なランチを楽しむのもいい。

老舗和菓子店のちもと総本店 軽井沢本店では、天然氷を使った抹茶のかき氷を。軽井沢では明治時代から製氷業が盛んに営まれており、別荘文化を当地にもたらしたショーが、村民の冬の仕事として勧めたのが始まりだという。軽井沢の清らかな湧水を長時間かけて凍らせた天然氷は純度が高く溶けにくい。その氷で作ったかき氷は、ふんわりとした口当たりが魅力。京都産の抹茶を使う宇治ミルク金時は、驚くほど香り豊かな逸品だ。氷の中にしのばせた小豆と練乳の優しい甘さが、キリッと爽快な抹茶の苦味を引き立てる。

味覚で〝涼〞を楽しんだ後は、旧軽井沢銀座通り周辺を散策するのもいい。軽井沢最古の教会である軽井沢ショー記念礼拝堂や、水車の道などの緑に包まれた小道があり、高原リゾートらしい軽井沢の風景に出合うことができる。

(ノジュール2024年7月号からの抜粋です。購入希望の方はこちらをご覧ください。)

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