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秋の味覚を探しにあの街へ

とれたての海の幸を探しに
八戸へ【青森県】

文=坂本真由美 写真=山本貴士

青森県人口第2位の都市・八戸は東北最大級の漁港。
秋になり、寒さが近づくにつれ、脂がのったブランドサバ・八戸前沖さばをはじめ、近海でとれる新鮮な海の幸が楽しめます。
サバ以外にもヒラメやスルメイカなど、秋の八戸で味わえる海の幸は種類豊富です。

近海でとれるからこその
新鮮な海の幸
青森県南東部に位置し、太平洋に面する八戸。全国有数の水揚げ量を誇る八戸港があり、四季折々の魚を使った料理に出合える港町だ。なかでもサバは昔からよくとれ、最盛期には年間約40万tもの水揚げがあったという。八戸の沖合は水温が低くプランクトンが豊富で脂肪分を蓄えることができるため、八戸のサバは「日本一脂がのったサバ」といわれる。さらに、港から数㎞の沖合が漁場なので新鮮なうちに水揚げできることも、八戸のサバを特別なものにしている。

2008年に八戸前沖さばブランド推進協議会が設立され、八戸前沖でとれるサバを「八戸前沖さば」、その中でも大型のサバを「八戸前沖銀鯖」としてブランド化。その立役者の一人、サバの駅店主・沢上弘さんは、子供のころからサバは買うというよりももらうものだったという。「おいしいのは当たり前で、それが特別なことだとは思っていなかったのです」。サバの駅は、八戸前沖さばブランド推進協議会から新しいサバ料理を開発してほしいとの依頼もあり、オープンした店だ。すし店も経営する沢上さんにとって、新たな挑戦だった。

サバが大量にとれていた
歴史や文化を受け継ぐ
パリッと焼いた皮の食感と香ばしさ、ジューシーな脂が調和するサバの串焼き。独創的な料理はサバの駅をオープンしたときに生まれたという。さらに、八戸前沖銀さばトロ漬け丼を考案すると、全国ご当地どんぶり選手権でグランプリを獲得。メディアに取り上げられることも増え、〝八戸のサバ〞はますます有名になった。

実は今、八戸ではサバの漁獲量が減ってきている。ここ数年、八戸周辺の海水温が上がり、サバが近寄らなくなっているという。八戸の漁業関係者、水産加工業者、飲食店には大打撃だ。もちろん沢上さんのサバの駅も対応を余儀なくされている。「今は北海道のサバも使っています。八戸のサバに似て、脂のりがよく加工しやすい。今できることは、サバ料理を作り続け、八戸のサバ食文化を発信し続けることだと思っています」。サバの魅力を知り尽くす沢上さんの言葉は、これからの八戸への思いがこもっていて、力強くも温かった。

サバを使った料理を提供し、〝料亭の鯖味噌煮〞で人気を博した店がある。昭和6年(1931)創業の屋台のすし店を前身とする割烹金剛だ。3代目で代表取締役の大久保圭一郎さんは、八戸前沖さばブランド推進協議会で副会長も務めている。「八戸港に揚がる魚にも変化があり、10年ほど前から天然のトラフグがとれるように。八戸にはフグを食べる文化がなかったのですが、プロモーションなどの結果、だいぶ浸透してきました。当店では5・6月に八戸のフグで料理フェアを行っています」。ただ、サバについては割烹金剛でも影響がある。それでもサバ料理が廃れることはないと大久保さんは言う。

「昔から大量にサバがとれた町なので、八戸にはサバ食文化が根付いています。八戸に来ると、年中おいしい海の幸が食べられるという体験を楽しんでいただきたいと思っています」。

(ノジュール2024年8月号からの抜粋です。購入希望の方はこちらをご覧ください。)

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