老後に備えるあんしんマネー学 第48回

さまざまな情報が飛び交うなか、老後資金に不安を抱えている人も多いのではないでしょうか。
お金を上手に管理して、老後を安心かつ心豊かに暮らすための、備えのマネー術を紹介します。

高齢期の住み替え候補となる
サービス付き高齢者向け住宅とは?

文=畠中雅子 イラスト=平田利之

「将来、自分や配偶者が介護状態になったらどうしよう」と、介護の不安が頭をよぎる方もいるでしょう。すでに、親の介護がスタートしているご家庭があるかもしれません。

介護がスタートした当初は、在宅介護を選択する方が多くなります。介護度が重くなるにつれ、在宅介護に限界を感じるケースが増え、受ける側もする側も、「待ったなし」で目の前の介護に対応しなければならなくなります。最期まで在宅介護を続けるのは厳しい現実を踏まえ、介護が必要になる前から、住み替えを実行する方が増えています。そこで今月は、高齢期の住み替え先候補となる、サービス付き高齢者向け住宅の暮らしをご紹介します。

サービス付き高齢者向け住宅
に住みつつ、
勤務を継続している人も
サービス付き高齢者向け住宅(以下、サ高住)は、高齢者用の賃貸マンションに住んで、それまでと変わらない暮らしを継続しつつ、生活相談や見守りを受ける暮らしです。見守り用として、室内に緊急連絡ボタンが付いていたり、一定時間以上、トイレを使わなかったときに安否確認をしてくれるシステムが設置されていたりします。

生活相談としては、施設側のスタッフがいつでも相談に応じてくれるほか、定期的に心理カウンセラーや社会福祉士などの専門家が相談にのってくれるサ高住もあります。

サ高住には食堂が併設されているところが多く、毎日3食、あるいは朝食と夕食の2食が提供されます。また、介護事業者が施設内に入居しているところも少なくありません。

サ高住は自立している人向けの住まいなので、仕事に通ったり、在宅勤務を続けている方もいます。

入居時の費用は一般の賃貸と同程度の敷金のみサ高住での暮らしにかかる費用として、入居時には1〜3カ月程度の敷金が必要になります。部屋の契約は一般的な賃貸契約と同じで、介護付有料老人ホームのように、まとまった入居一時金は不要です。

月々の費用として、家賃以外に管理費がかかります。家賃は周辺の相場と同程度か、共用施設が多いと高めになります。見守りや生活相談のコストが含まれるため、管理費は高めに設定されています。持ち家ではないので、修繕積立金や固定資産税は不要です。

食事が提供されている施設の場合、月々の費用に食べた分の食費が上乗せされます。

サ高住での介護は在宅介護と同じ仕組みサ高住で暮らしているときに介護が必要になったら、どうなるのでしょうか。サ高住での介護は「在宅と似たような扱い」になります。契約するケアマネージャーが作った介護プランに従って、サ高住に住みながら介護を受けます。

施設内や隣接した場所に介護事業者が入居している場合は、その事業所から介護ヘルパーが派遣されるのが一般的です。ただし、自分で好きな介護事業所と契約することもできます。

介護度ごとに決まっている区分支給限度額も、在宅で介護を受けるときと料金は変わりません。サ高住はバリアフリーになっているので、車椅子での生活にも対応できます。

またサ高住の中には、「特定施設入居者生活介護」の指定を受けている施設もあります。この指定を受けていれば、介護付有料老人ホームと同じように、介護度ごとに決まった一定額を上乗せすることで、24時間365 日の介護が受けられます。介護サービスをたくさん受けても、追加費用は発生しない仕組みになっているので、介護度が重くなってからも安心です。

はたなか まさこ
ファイナンシャルプランナー。
新聞・雑誌・ウェブなどに多数の連載を持つほか、セミナー講師、講演を行う。
「高齢期のお金を考える会」「働けない子どものお金を考える会」などを主宰。
最新刊『70歳からの人生を豊かにするお金の新常識』(高橋書店)など著書多数。

(ノジュール2024年8月号からの抜粋です。購入希望の方はこちらをご覧ください。)

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