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年初めに京の道具を求める旅

文=土井ゆう子 写真=秋田大輔

千年の都、京都では皇族や貴族、寺社などの要望に応え、ものづくりの技術が磨かれてきました。
脈々と受け継がれてきた多くの専門店や職人の技術は伝統の継承にとどまらず、現代の暮らしにあわせて進化し続けています。
新たな年は、使うことで心豊かになれる、京の道具を探す旅に出かけてみましょう。

伝統工芸品の使い方が分かる
カフェでイメージトレーニング
京都駅に着いて、ひと息つきたいとまず訪ねたのは、手作り茶筒の老舗・開化堂が運営するKaikadoCafé。明治8年(1875)創業の開化堂は、英国から輸入されるようになった錻力(ブリキ)を使い、丸まる鑵かん製造の草分けとして、日本で最も古い歴史をもつ茶筒工房。創業当時より一貫した手作りで、高い気密性を誇る茶筒は、上蓋を閉める際に手を離すと、自重で蓋がゆっくり閉まっていく。シンプルであるとともに、実用性が高く、用と美を備えた茶筒として国内外で評判だ。

2016年にオープンしたKaikadoCaféは、かつては京都市電の事務所兼車庫だった建物で、現在は登録有形文化財となっている。天井は高く、河原町通に面して大きな窓があり、開放的で気持ちがいい。店内では開化堂の茶筒や珈琲缶をはじめ、朝日焼のカップなど伝統工芸の品々を使用し、展示販売も行っている。茶筒は銅、ブリキ、真鍮などがあり、ディスプレイされている茶筒で、経年変化の具合が分かる。おしゃれな空間でゆったりお茶を楽しみながら、伝統と新しさが融合する京の道具屋さん巡りについてイメージを膨らませよう。

職人の技が身近に感じられる
製作体験にもトライ
京麸の老舗・半兵衛麸でお昼をいただく。茶房では、ふだんあまり食べる機会のない生麸やゆばを使った料理が味わえる。もともと、麸の食べ方を知ってもらうために始めたという茶房の料理は、田楽や焚き合わせ、白味噌仕立てのお椀、デザートにまで麸が使われている。その麸の種類の多さに驚きつつ、一品一品を堪能する。

次に向かったのは、高台寺のほど近くにある高台寺一念坂金網つじ。店内には美しい亀甲模様を描く盛り網や茶こし、焼き網、とうふすくいなどが整然と並ぶ。和の製品だけでなく、モダンなコーヒードリッパーやランプシェードなども印象的だ。

起源は平安時代まで遡り、京料理や和菓子とともに発展した京金網の技術。店主であり職人でもある辻徹さんは、世界中で愛されるものを作りたいと、グローバルな視点で新しい製品、新しい編み方を生み出している。銅やステンレスの針金をひと目ひと目編み上げる手編みの製品は、美しいだけでなく、暮らしの道具として丈夫で使いやすい。店舗の2階では、現役の職人さん指導のもと、とうふすくい作りの体験ができる。伝統技術を身近に感じられる機会なのだが、これが結構難しく、しばし亀甲編みに没入する。

夕食は町家の空間で、カジュアルな雰囲気だけど、おいしいものが食べられると評判の沐へ。名物のどて煮やポテトサラダをつまみながら、ワインをグラスで楽しむ。店主が東寺や岡崎公園などで開かれる骨董市で買い集めるという器にも趣がある。

(ノジュール2025年1月号からの抜粋です。購入希望の方はこちらをご覧ください。)

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