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深山幽谷を走る列車が紡ぐ四国の絶景秘境旅
四国まんなか千年ものがたり
×JR土讃線
徳島県と香川県をつなぐ、四国まんなか千年ものがたり。
秘境の地を走りながら、四国山地の絶景を堪能できる観光列車です。
道中の駅でおもてなしを受け、香川県を目指す旅に出かけましょう。
旅は四国の真ん中
大歩危からスタート大歩危峡〈おおぼけきょう〉は徳島県にある吉野川の激流によって造られた約8㎞にわたる渓谷だ。今回、渓谷のある大歩危駅から香川県の多度津駅までを結ぶ、四国まんなか千年ものがたりで歴史と文化の町・琴平を目指す。列車の発車までは、しばし大歩危の雄大な自然を体感しよう。訪れたのは遊覧船の乗り場。観光遊覧船に乗り、船頭さんの案内で吉野川の清流を巡る約30分のクルーズを楽しむ。間近で見る渓谷や岩肌は大迫力。
ここで見られる岩石は1〜2億年ほど前に海底深くで造られたもので、国の名勝にも指定されている。
駅の方に戻り、乗車前に軽く腹ごしらえをするため大歩危橋を渡ってすぐのhanancoffeeへ向かう。大歩危の景色に惚れ込んだ夫婦が営む開放的なテラスカフェには多くの観光客が訪れる。広々としたテラスは店主の手作りというから驚き。大歩危散策で疲れた体を、スムージーですっかりクールダウンできた。
ホームで待つこと数分。ゆっくり入線してきたのが今回乗車する、四国まんなか千年ものがたりだ。四国山地を縦断しながら地域のグルメを堪能できる列車で、緑色の先頭車両が印象的なそらの郷紀行(下り)の終着駅はここ大歩危駅。反対路線は赤色の車両を先頭にしてしあわせの郷紀行(上り)となる。車内は囲炉裏のある古民家をイメージした落ち着いた内装。定員は1号車が22席、3号車が24席と、ゆったり席を構える。左右両側の車窓から景色を堪能できるように、窓向きのカウンター席を除いて通路をはさんだ両サイドの座席は、前後にずらして配置されている。間の2号車にはグループにぴったりの大きなベンチシートとサービスカウンターがある。
人・食・絶景に癒やされる
四国縦断の遊山列車軽やかな鐘の音を発車の合図に、大歩危の地元の人や駅スタッフの笑顔に見送られながら大歩危駅を出発。食事を予約すると付いてくる徳島のお茶を飲んでいると、間もなくして小歩危駅に到着し、予約していた弁当の提供が始まった。
今回乗車した上り列車・しあわせの郷紀行の弁当は地元・徳島の日本料理店・味匠藤本による季節のお重弁当で椀物が付く。お重の蓋を開けるたびに、その品数と華やかさに思わず感嘆のため息が漏れる。まずは店自慢という国産牛肉すき焼き煮をいただく。脂の甘みを自然に引き出したやさしい味付けだ。徳島の美食に舌鼓を打ち、あっという間に完食した。
琴平駅までの道中では、タヌキの妖怪の伝承が息づく阿波川口駅や、たばこの製造で繁栄し、駅でたばこ踊りを楽しめる阿波池田駅など、途中駅で停車時間が設けられ、しばし地元の人との交流を楽しめる。列車旅の醍醐味ともいえる温かいおもてなしに旅気分が盛り上がる。また、列車の走行中にも沿線で手を振る人を見かけ、そのたびに温かい気持ちになる。車内では沿線のみどころなどがアナウンスされ、みどころに近づくと景色を楽しめるよう、列車はゆっくりと進んでいく。
旅の後半ではアテンダントから購入した3種の利き酒を堪能した。地酒は香川出身の人間国宝・山下義人〈よしと〉さんによる漆器で提供される。滑らかな口当たりになるように設計された美しい器も注目したいポイントだ。
旅も終盤に差しかかり、列車は坪尻駅に停車する。周囲に人家がなく、山間に位置するため車で立ち寄ることができない秘境駅だ。ここでは、急勾配を克服するために進行方向を転換する、スイッチバックを体験できる。
まもなくして降車する琴平駅に到着し、四国まんなか千年ものがたりの乗客だけが利用できる専用ラウンジで、フェアウェルサービスのアイスを食しながら余韻に浸る。このラウンジは琴平駅が改修されるタイミングで新たに設置されたもの。登録有形文化財に指定されている大正モダン建築の美しい駅舎にも注目したい。