老後に備えるあんしんマネー学 第58回
さまざまな情報が飛び交うなか、老後資金に不安を抱えている人も多いのではないでしょうか。
お金を上手に管理して、老後を安心かつ心豊かに暮らすための、備えのマネー術を紹介します。
2025年から「年収の壁」が
変わったことをご存知ですか
2025年は税制が変わり、基礎控除や給与所得控除の引き上げが行われました。加えて、一定以下の年収の場合は、非課税ラインが変わる措置も導入。減税のための改正とはいえ、制度がより複雑になり、分かりづらさが増しています。そこで今回は、「年収の壁」の変化を取り上げます。
「年収」「所得」「課税所得」
の違いを理解していますか?最初に「年収」「所得」「課税所得」の言葉の意味を説明します。3つとも言葉の印象は似ているものの、金額はそれぞれ異なるからです。
まずは、年収から。年収は、税金や社会保険料を引く前の金額。いわゆる額面を指します。次に所得は、年収から決められた控除や経費を引いた後の金額。会社員であれば年収から給与所得控除を、自営業者は年収から経費を、年金生活者は、年収から公的年金控除を引いた金額を指します。
3つ目の課税所得は、所得からさらに基礎控除や配偶者控除、扶養控除などを引いた金額になります。実際の税額は、課税所得を基に計算されます。そのため年収、所得、課税所得の順に、金額は少なくなっていきます。
パート収入が200万円以下
なら160万円まで非課税にここからは控除額の改正について、基礎控除から説明します。2024年までの基礎控除は、収入にかかわらず一律48万円でした。これが2025年からはパート(給与)収入の額に応じて、58万円から95万円に引き上げられています。
例えば、基礎控除の最高額である95万円と給与所得控除65万円が適用される場合、160万円までの収入には所得税がかかりません。95万円の基礎控除が適用されるのは、パート収入では200万円以下の方になります。
長らく「パートの年収の壁は103万円」と言われてきました。103万円の中身は、48万円の基礎控除と55万円の給与所得控除を足したものでした。これが2025年からは、58万円+65万円=123万円が非課税の最低ラインになっています。そして、前述のとおり、年収200万円以下のパート収入の方は、95万円の基礎控除が適用されるので、160万円までは所得税がかからなくなりました。
はたなか まさこ
ファイナンシャルプランナー。
新聞・雑誌・WEBなどに多数の連載をもつほか、セミナー講師、講演を行う。
「高齢期のお金を考える会」「働けない子どものお金を考える会」などを主宰。
『70歳からの人生を豊かにするお金の新常識』(高橋書店)など著書多数。