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今年は午歳総開帳の年 7つの札所をつないで歩く

秩父札所巡り〈埼玉県〉

文=高田京子 写真=中田浩資

今春、12年に1度の午歳総開帳を迎える秩父札所34観音霊場。
里山の景色を満喫しながら、歩きやすい市街地の札所を巡ってみましょう。

12年に1度の総開帳

ご縁を結ぶ旅へ
秩父札所は34の寺院で構成される観音霊場だ。文暦元年(1234)午〈うま〉歳3月18日、閻魔大王をはじめとする十三権者〈じゅうさんごんじゃ〉により開創されたといわれる秩父札所では、午が観音の眷属〈けんぞく〉でもあることから、午歳に秘仏の本尊を公開する午歳総開帳が行われてきた。2026年の今年は12年に1度の貴重な機会なのだ。

西武鉄道西武秩父駅から住宅街を抜け、羊山公園の北側に位置する見晴しの丘へ。市街が一望できるスポットだ。眼下にはいくつもの札所が点在する。秩父札所は必ずしも1番から番付通りに巡拝しなくても構わない。今回は見晴しの丘のすぐ北に位置する第11番札所常楽寺から徒歩巡礼を始めよう。国道から桜並木の坂を上がると、緑に埋もれるように本堂と納経所が立つ。常楽寺の中興開山である門海上人が、夢に現れた黄面〈こうめん〉の老僧と金剛神によって病が癒やされ、長寿を全うしたという霊験譚から、常楽寺は病気平癒、長寿祈願の寺として篤く信仰されてきた。また明治の初めまで天台宗だったため、本尊のほか天台座主の元三〈がんざん〉大師(良源)を祀る。

山裾の札所から繁華街へ
レトロなランチも満喫
見晴しの丘から来た道を戻り、さらに巡礼道の表示に従って南へ進む。鉄道の高架下をくぐると第12番札所野坂寺の山門前だ。野坂寺は花の寺として知られ、椿や枝垂れ桜、アジサイやフジなど四季折々の花が咲く。

重層入母屋造りの山門は、寛保元年(1741)の建造。明治の秩父大火でも難を逃れた貴重な山門だ。左右の花頭窓をのぞくと、奥に閻魔大王など十王像の姿が見える。本尊の聖観世音立像は平安時代作とされる杉の一木造り。縁起によると、昔この地で賊に襲われた甲斐の商人が、一心に観音に祈ると不思議なことに賊が退去し、命が助かったという。それを感謝して秘蔵の観音像をここに安置し、堂を建てたのが野坂寺の始まりと伝わる。境内には地元の彫刻家・高橋敬秀〈たかひで〉さんが制作し、寄贈したあずかり観音や十牛観音、十三仏像のほか、呑龍上人が祀られた呑龍堂などがあり、みどころが多い札所だ。

野坂寺の参道を下りて右へ、その先を左へと巡礼道が続く。踏切を渡って商店が並ぶ道を秩父鉄道御花畑駅方面へ進むと、ほぼ正面に第13番札所慈眼寺が見えてくる。山門をくぐると正面に三間四面の本堂が立つ。唐破風の向拝や彫刻、花鳥が美しく描かれた内陣の格天井など、思わず見とれてしまう。境内右手には土蔵造りの一切経蔵、薬師堂の本尊、薬師如来は眼病治癒に霊験があるとされ、7月8日の縁日には多くの参詣者で賑わうという。

慈眼寺を出て通りを北へ進み、レトロな外観が目を引く秩父パリー食堂へ。看板メニューのオムライスはボリューム満点で、歩く旅のエネルギー補給にはもってこい。82歳の3代目とお孫さんの4代目店主は店を切り盛りしながら、貴重な建物を未来に残そうと奮闘中だという。

(ノジュール2026年3月号からの抜粋です。購入希望の方はこちらをご覧ください。)

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