老後に備えるあんしんマネー学 第36回
さまざまな情報が飛び交うなか、老後資金に不安を抱えている人も多いのではないでしょうか。
お金を上手に管理して、老後を安心かつ心豊かに暮らすための、備えのマネー術を紹介します。
すでにNISAを利用している方も、これから利用を検討している方も、来年からNISA制度が拡充するニュースはご存知だと思います。
現行NISAは「一般NISA」か
「つみたてNISA」の選択制新制度のNISAの説明に入る前に、現行制度のNISAについておさらいをします。現行のNISAは、「一般NISA」と「つみたてNISA」の2つの制度に分かれており、どちらかの制度しか利用できません。1年ごとに、どちらの制度を利用するかの選択は可能です。前者を選択した場合は年間120万円までの投資ができ、後者では年間40万円までの積立てができます。どちらの制度を利用した場合でも、配当金や売却益が非課税になります。
現行制度では運用期間に区切りがあり、一般NISAだと最長5年間、つみたてNISAは最長で20年間になっています。運用期間が終わった後も購入した商品を保有し続ける場合は、ロールオーバーと言って、預け替えの手続きをすることになります。ただし新制度への移行により、一般NISAの場合、この先は5年で非課税保有期間が終わりを迎え、その後は預け替えができなくなります。つみたてNISAは、投資した年から最長で20年間は保有できます。新NISAがスタートしても、現行制度で投資した金額は別枠で保有できますので、売却時期を見極めながらの換金が可能です。
「一般投資枠」と「つみたて投資枠」
に変わり、併用が可能になる現行のNISAに対して、新制度のNISAでは、一般NISAが「成長投資枠」、つみたてNISAが「つみたて投資枠」という名称に変わります。前者では年間240万円、後者は年間120万円の投資が可能になります。そして改正の目玉と言えるのは、両方の制度を併用できるようになること。併用すれば、最大で年間360万円までの非課税投資が可能になり、投資できる合計額(生涯投資枠)は最大で1800万円に拡充します。
すでにNISA口座を保有している人は、手続きをしなくても、現在口座を開設している金融機関で、自動的に新NISA口座が開設されます。現行制度と新制度の2つの口座を持つことになるわけです。そして、新NISAでは、投資期間に制限がなくなり、長期間の投資が可能になります。新NISAへの切り替えのタイミングで、長く付き合っていける金融機関はどこかを検討して、利用する金融機関を変更するのもおすすめです。
60代以降の投資では
期間を短めに考えるのが無難さて、新制度のNISAは非課税で投資できる金額が増えたり、投資期間のしばりがなくなるなど、使い勝手はかなり良くなります。現行のNISAと異なり、2つの制度を併用できるようになるため、投資戦略を変える必要も出てきています。
ただし、60代からNISAを利用する場合、投資プランは20年などの長期で考えるのではなく、5年くらいの単位で考え、もう少し長く投資できそうであれば、また次の5年の戦略を立てるのがおすすめ。これはスポット投資(好きなタイミングで購入する方法)でも積立投資でも、同じ考え方になります。年金生活に入ると、老後資金は少しずつ減るため、投資をはじめた当初は余裕資金だと思っていたお金が、生活費として必要になることもあるからです。
一方、60代以降で、退職金などまとまった資金をお持ちの方も多いはず。退職金を受け取ったのち、余裕資金だと見積もれるお金については、成長投資枠を利用して、株や投資信託をスポット買いをしていくのもよいでしょう。
はたなか まさこ
ファイナンシャルプランナー。
新聞・雑誌・ウェブなどに多数の連載を持つほか、セミナー講師、講演を行う。
「高齢期のお金を考える会」「働けない子どものお金を考える会」などを主宰。
最新刊『70歳からの人生を豊かにするお金の新常識』(高橋書店)など著書多数。
