老後に備えるあんしんマネー学 第46回

さまざまな情報が飛び交うなか、老後資金に不安を抱えている人も多いのではないでしょうか。
お金を上手に管理して、老後を安心かつ心豊かに暮らすための、備えのマネー術を紹介します。

親戚が集まるお盆のときこそ
未来のお墓を考えてみませんか?

文=畠中雅子 イラスト=平田利之

お盆休みを利用して、帰省される方も多いのではないでしょうか。コロナ禍も落ち着き、久しぶりに親戚に会えることを楽しみにされている方も少なくないはずです。

お墓の種類の最新調査で
樹木葬が全体の約半数を
占める
さて、親戚が集まりやすいお盆休みこそ、「お墓」について話し合う機会をもたれてはいかがでしょうか。先祖代々のお墓を継承するケースも多いとは思いますが、近年では「墓じまい」や「墓の終活」という言葉が定着するほど、お墓の整理が進んでいます。

墓じまいが進む理由は、継承者がいない、継承者がいても嫁ぎ先のお墓に入る予定など、先祖代々のお墓を継承するのが難しい実態があるからです。実家はなくなっているのに、お墓はもとの実家近くにあるためにお墓参りが大変だという理由で、お墓を引っ越すケースもあります。先祖代々のお墓を継承するのが難しい状況は、お墓に関する最新の調査(下図)からも読み取れます。新しく購入したお墓の種類をご紹介すると、一般的なお墓を購入した人は21・8%。全体の約2割にすぎないといった結果が出ています(※第15回お墓の消費者全国実態調査〈2024 年〉霊園・墓地・墓石選びの最新動向〈鎌倉新書〉)。

その一方で、近年、非常に増えているのは48・7% と、全体の半分近くを占める「樹木葬」です。樹木葬は、寺院や霊園、墓地などの樹木葬専用のスペースに、埋葬されるシステムです。埋葬スペースは1人用、夫婦などの2人用、家族4〜6人を埋葬できるタイプ、ペットと一緒に埋葬できるタイプなど、樹木葬を扱う場所によってさまざまです。また、個別に埋葬されるのではなく、桜の木などの樹木葬専用スペースに合祀されるタイプの樹木葬もあります。

樹木葬の場合、十三回忌までなどの一定期間は専用スペースに埋葬され、その後、遺骨は合祀墓に移されて永代供養をしてもらえるのが一般的です。十三回忌よりも長く、専用スペースで供養してもらいたい場合は、三十三回忌などまで埋葬してもらえる樹木葬の寺院や霊園を探すことになります。

私は樹木葬を扱っている寺院や霊園、墓地を10カ所ほど見学した経験があります。墓石にギターやドラム、ペット、ウイスキーなどが描かれていたり、遺族(家族)への感謝の言葉などが刻まれていたりするのを見て、生前の個人の暮らしぶりに思いを馳せることができる埋葬方法だと感じました。樹木葬を希望される方が増えている状況は、時代の流れとしても自然なことなのかもしれません。

近年では、一般墓が減っていることを受けて、一般墓のスペースを整理して(移動して)、樹木葬のスペースを新たに設置する寺院等も増えています。

納骨堂を選ぶ人が
全体の2割になっている
次にご紹介するのは、納骨堂です。納骨堂は、寺院などが管理する建物の中に埋葬される方法です。建物内に埋葬されるので、季節や天候に左右されずにお参りできるのがメリット。駅からのアクセスがいい納骨堂が多いのも、メリットといえるでしょう。前述の調査を見ると、納骨堂を選ぶケースは19・9% になっています。納骨堂の場合、お墓の引っ越しに利用されるケースも増えています。納骨のスタイルとしてロッカー形式、仏壇式などがありますが、最近増えているのは自動搬送式。専用(各家庭用)のIC カードをかざすと、遺骨が参拝スペースまで自動的に運ばれてくるタイプです。

なお納骨堂は、建物の中にあるのが一般的ですが、一般墓のある境内に納骨スペースを設けて、永代供養をしている寺院もあります。

はたなか まさこ
ファイナンシャルプランナー。
新聞・雑誌・ウェブなどに多数の連載を持つほか、セミナー講師、講演を行う。
「高齢期のお金を考える会」「働けない子どものお金を考える会」などを主宰。
最新刊『70歳からの人生を豊かにするお金の新常識』(高橋書店)など著書多数。

(ノジュール2024年8月号からの抜粋です。購入希望の方はこちらをご覧ください。)

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