人気の特集
口の老化=オーラルフレイルを防ぐ
50歳から始めるお口ケア
食事をするのも、おしゃべりするのも、すべて口が健康であればこそ。
でも口の機能は、加齢とともに衰えていきます。そこに待ったをかけるのは、今!
今日から始められるオーラルケアを歯学博士の照山裕子先生に教えてもらいました。
年齢とともに現れる
口の不調なぜ、口のケアが大切なのでしょうか。それは何より口が食べ物の入口だからです。食べることは生命の源。しっかり食べることができてこそ、人は元気に生きることができます。そうした見地から、厚生省(当時)と日本歯科医師会は80歳で20本の歯をキープしようという8020運動を1989年から推進し、大きな成果を上げました。
しかし、口で重要なのは実は歯だけではありません。消化しやすいように歯が食べ物を細かく噛み砕くことができるのは、口周りの筋肉の働きです。砕いたものを唾液と混ぜ合わせてひとまとめにするのは、主に舌の役割。唾液には消化を助け、飲み込みやすくするなどの働きがあり、食べたものは最終的に舌と喉の筋肉の力で食道へと送られます。
つまり歯に加えて、「噛む力」や「舌の力」「唾液の力」「飲み込む力」がうまく働いてこそ、食べ物の入口としての口の機能を果たすことができるのです。さらに唾液の分泌は噛むことで促され、唾液が行きわたることで舌の動きも嚥えん下げもスムーズに行えるなど、4つの力は互いに関連し合っています。
年齢を重ねていくと、足腰や記憶力など、だれでもどこかに不調が出てくるもの。口も例外ではありません。心身の機能の衰えをフレイルといいますが、加齢による口の衰え、つまりオーラルフレイルはだれにでも現れ、4つの力は徐々に低下していきます。60代後半に顕著になりますが、実際にはもっと早く、40代から現れる人もいます。特によく噛まずに食べるのが癖になっている早食いの人は、早い段階から口が衰えている可能性も高いのです。
ステーキやたくあんなどの弾力のあるものが噛みづらくなったり、かたい煎餅に歯が立たなくなったり。口が乾く、ものが食べにくい、飲み込みにくい、むせやすくなる、滑舌が悪くなる
といった現象も現れます。鼻で呼吸していた人が口呼吸をするようになる、口臭が発生するといったことも起きます。
こうした不調が現れるだけでなく、胃腸に送る前に食べ物を消化しやすいよう十分に処理できないので、消化吸収に余分なエネルギーを割かれ、胃腸に負担がかかります。食べる量が減って栄養が不足する場合もあり、ひいては全身の不調や老化にもつながります。