「新時代医療(ネオメディカル)」のススメ 第5回

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不調が続くときには
IgG検査で腸内環境をチェック

澤登雅一先生
(文:大政智子 イラスト:安齋 肇)

倦怠感が続く、肌荒れがひどい、むくみ、肩こり、イライラなど、病気ではないけれど慢性的な不調が続くときには、〝遅発型フードアレルギー〟の可能性があります。
今月は、食べ物が原因の体調不良を探り、腸内環境もわかるIgG検査について、澤登雅一先生にお話をうかがいました。

わかりにくい遅発型フードアレルギーを
チェックするIgG検査
食物アレルギーとは特定の食べ物を口にしたときに起こる反応です。

一般的に、食物アレルギーが疑われる場合は、血液中のIgEという抗体(特定の食品や花粉など異物が体内に入り込んだとき、それに反応してできる物質)を調べるIgE検査が行われます。

IgE抗体は特定の物質に反応するため、アレルギーの原因となる食品を口にした直後から、血液中に急増し、かゆみ、じんましん、腹痛、下痢といったわかりやすい症状が食後30分以内に現れます。

さらに、ひどい場合には、呼吸困難や命に関わる激しい反応(アナフィラキシーショック)が起こることもあります。

ただし、原因となる食品を避けると血液中のIgE抗体は減っていき、症状も治まるため、比較的、原因が分かりやすいアレルギーとされています。

一方、新しいタイプのアレルギーの要因として注目されているのがIgG抗体です。IgG抗体は血液中にもっとも多く存在する抗体で、複数の物質に反応します。特定の食べ物に対してというよりも、どの食べ物にも反応しますし(反応の強さは異なる)、常に血液中に存在しています。

特定の食べ物ばかり食べていたり、腸内環境がよくなかったりすると、血液中のIgG抗体の量は徐々に増えていき、やがて一線を超えると反応が強くなり、さまざまな症状が出ます。

IgG抗体が関与する症状は、倦怠感、肌荒れ、肩こりのほか、イライラなどメンタルの不調まで多岐にわたります。食後、数時間から数日と時間が経ってから症状が出るので、「遅発型フードアレルギー」と呼ばれます。

一般的な食物アレルギーのメカニズムとは異なるため、アレルギーではないという意見もありますが、抗体が原因で発症する点は同じです。

IgG検査はIgG抗体の反応の強さを数値化します。検査方法はいくつかありますが、インターネットなどで入手できる検査キットの場合は、送付された専用の検査キットを用いて、ごく微量の血液を自分で採取します。

献体(血液)を返送すると、後日、検査結果が送られてくるものが多くなっています。費用は数万円で1回の検査で100〜200種類の食品に対する反応を調べることができます。

犯人さがしではなく生活習慣の見直しより健康になるための指標澤登先生がクリニックで行っているIgG検査は、約96~219種類の食品について調べることができ、反応の強さは0〜Ⅵの7段階で評価されます。基本的には、レベルⅢ以上の場合は対策が必要とされています。

インターネットなどの検査キットを利用すれば、比較的簡単に調べられますが、結果だけを見て、反応が強く出た食品を食べるのを避けるだけという対応はおすすめできません。避けてしまった食品が栄養学的に非常に大切な食材だった場合、かえって健康を害する可能性があるからです。

なかにはほとんどの食品に高い反応が出るケースもあります。この場合、腸粘膜のバリア機能の低下による腸内環境の悪化が疑われます。

腸内環境が悪いとアレルギー、がん、肌荒れ、動脈硬化、うつなどさまざまな病気の発症につながります。

特定の食べ物を減らしたほうがいいのか、腸内環境を改善するための根本的な対策が必要なのかは、自分で判断するのは難しいでしょう。医療機関で検査を受け、食習慣全体の改善についてのアドバイスを受けたうえで実践し、困ったときには専門家に相談できるようなかたちが理想的です。

遅発型フードアレルギーは命にかかわるものではありませんが、毎日食べているものが原因の場合、症状はずっと改善しません。

原因不明の不調に長年、悩まされている、医療機関を受診しても「異常なし」と言われる、治療を受けても症状が改善しないという人は、IgG検査を受けてみてはいかがでしょうか。

さわのぼり まさかず●三番町ごきげんクリニック院長。医学博士。1992年東京慈恵会医科大学卒業。血液内科医として、日本赤十字社医療センターにて14年間勤務。白血病、悪性リンパ腫、多発性骨髄腫など血液のがん治療に携わる。
2005年より現職。治療はもちろん、患者さんが自分で健康を管理するための医療的なサポートを提供。
https://kenko.org/

(ノジュール2019年5月号からの抜粋です。購入希望の方はこちらをご覧ください。)
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