「新時代医療(ネオメディカル)」のススメ 第8回

日々進歩する予防医学。
新元号となる2019年は、“未病”対策を見直してみませんか?
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「超加工食品」があなたの寿命を縮める!?
ゆる無添加のススメ

白澤卓二先生
(文:大政智子 イラスト:安齋 肇)

近年、シニアのコンビニ利用が急増しています。
弁当や惣菜、菓子パンなどがいつでも購入できるのは便利ですが、その反面、主力商品である「超加工食品」の過剰摂取が、健康に与える悪影響についてのエビデンスが次々に発表され、欧米では注目を集めています。
今月は「超加工食品」のリスクについて、欧米の最新エビデンスに詳しい、白澤卓二先生に伺いました。

超加工食品の食べ過ぎで死亡リスクが上昇「超加工食品」とは常温でも長期間保存できるよう、高度に加工された食品のことで、大量生産された菓子パンやスナック菓子、菓子類、ハムやミートボールなど肉の加工食品、インスタントラーメンなど多岐にわたります。

こうした食品はコンビニの主力商品でもあります。いつでも開いていて、品揃えの豊富なコンビニは、時間のない現代人には強い味方となります。

ただ、便利な「超加工食品」は最新のエビデンスで発がんリスクや死亡リスクを高めることが指摘されており、「食べ過ぎ注意」な食品であることは、日本ではまだあまり知られていません。

セブン‐イレブンが公開している「来店客調査」によると、50歳以上のコンビニ利用者は、1990年代初めは1割未満でしたが、2017年には約4割となんと4倍以上に!

忙しいときに利用する程度であればいいのですが、毎日の食事を「超加工食品ですませている」という人は要注意です。

2018年にフランスのパリ13大学の研究チームが『BMJ』に発表した研究報告によると、食事における超加工食品の割合が10%増えると、すべてのがんのリスクが11%、乳がんのリスクは12%上昇していました。

さらに、同研究チームは2019年の2月に、米国医師会の医学誌『JAMA Internal Medicine』に、超加工食品の摂取量の増加と死亡リスクに関連性を認める論文を発表しました。これによると超加工食品の摂取量が10%増加すると死亡率が15%増加とのことです。

超加工食品を食べたからといって、それが原因でがんになったり、すぐに死に直結する訳ではありません。ただし、食べる量が多くなると、それらのリスクが高まる傾向が認められたという事実は見過ごせません。

健康のためには
食べる量や回数を減らそう
とはいえ、すべての加工食品を食べてはいけない、ということではありません。加工食品は現代の食生活には欠かせないものですから、「口にしない」というのは無理な話です。

また、気にしすぎると食べられるものが限られてしまって、かえってストレスになってしまいます。そこで、白澤先生は超加工食品を食べる量や回数を減らす「ゆる無添加」をすすめています。

まずは、リスクが指摘されているものから減らしていきましょう。

超加工食品のなかでがんとの関連が明確に指摘されているのが、ハムやソーセージなどの加工肉です。世界がん研究基金と米国がん研究協会は赤肉(牛・豚・羊など)とともに、加工肉の摂取量を減らすよう勧告しています。

厚生労働省は「日本人は欧米人に比べると赤肉や加工肉の摂取量が少ないので気にしなくてもよい」という見解を発表していますが、好んで食べている人は要注意です。意識することで食べる総量を減らしましょう。

もうひとつ注意したいのが「糖質」を多く含むものです。とくに、甘いお菓子は血糖値の急上昇を招き、認知症のリスクを高めるので、できるだけ避けたほうが安心。どうしても甘いものが食べたいときには、パッケージに記載されている原材料をチェックして、「異性化糖(果糖ブドウ糖液糖、ブドウ糖果糖液糖など)」や「人工甘味料(アスパルテーム、サッカリン、スクラロースなど)」が入っていないものを選びましょう。これらは血糖値を急上昇させる、動脈硬化を進行させる、食欲が止まらない中毒性をもたらす……といったリスクが指摘されています。

血糖値のためにカロリーオフ、カロリーゼロといった表記がされているお菓子やドリンクを選んでいる人は、それらにも注意が必要です。それは、カロリーを抑えるために人工甘味料が使用されていることが多いからです。

考えてみれば、超加工食品が登場したのは1970年代とそれほど昔ではありません。現在、100歳を超える長寿者が子どもの頃には、超加工食品は存在していませんでした。子どもの頃から超加工食品を口にしている年代に比べれば、摂取した総量は少ないでしょう。

もしかしたら、それが長寿の要因のひとつかもしれません。便利さについ手が伸びてしまいがちな超加工食品ですが、リスクを頭の片隅において食べ過ぎないように気をつけましょう。

*『BMJ/British Medical Journal』は英国医師会が発行する医学誌。世界五大医学雑誌のひとつ。

白澤卓二 〈しらさわ たくじ〉
お茶の水健康長寿クリニック院長。白澤抗加齢医学研究所所長。米国ミシガン大学神経学客員教授。
1982年千葉大学医学部卒業後、東京都老人総合研究所などを経て2007~15年まで順天堂大学大学院医学研究科加齢制御医学講座教授。日本におけるアルツハイマー病研究の第一人者。
『「お菓子中毒」を抜け出す方法』(祥伝社)『Dr.白澤のゆる無添加のすすめ やっぱり心配 添加物と超加工食品』(主婦の友社)など著書多数。
ohlclinic.jp

(ノジュール2019年8月号からの抜粋です。購入希望の方はこちらをご覧ください。)
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