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酒井順子さんが訪ねる

金沢・“発酵のふるさと”の町歩き

文:酒井順子 写真:中田浩資

高校時代に初めてのひとり旅で 金沢を訪れた酒井順子さん。
大人になって出かける二度目の金沢ひとり旅では、加賀の風土に培われ、金沢の人々の暮らしと共にある 身体にやさしい発酵食を食べ歩き。
大人だから分かる金沢の魅力とひとり旅の楽しみを満喫します。

醤油醸造の町・大野で
沁みわたる発酵の力

東京で生まれ育った私は、日本海側の陰影に、憧れを持っています。生まれて初めて一人旅をしたのは高三の時でしたが、その行き先に選んだのも、金沢。米原〈まいばら〉で乗り換えて金沢に着いた時は、憧れの地に立った喜びで、胸が高鳴ったものでした。

それから何度も金沢には来たけれど、一人旅は高三の時以来、初めてかも。新幹線で気軽に行くことができるというのも、隔世の感があります。

金沢駅に着いた時は、雨。しかし雨もまた似合うのが、金沢です。しっとりとした景色を眺めつつ、まずは海沿いの大野町へと向かいました。

海が近づいてくると、渋い屋並みが目に入ってきます。大野は、醤油の醸造で知られた町。加賀藩の命により古くから醤油が作られ、江戸時代には六十軒もの醤油蔵があったのだそうです。

今はそれが十八軒になっているとのことですが、その中の一軒、ヤマト醤油味噌(ヤマト糀〈こうじ〉パーク)にうかがいました。まずは醤油、甘酒、味噌など様々な発酵食品を使用したランチをいただきます。「お腹の調子がとても良くなりますよ」

と、色白美人女将の山本雪子さんからうかがいつつ、さらに蔵などを見学していると、糀の良い香りが漂ってくるのでした。身体の内から外から、発酵の力が沁みわたるかのよう…。

花街の路地歩きと
おでん屋さんでの出会い
大野を後にして、次は街中の主計町〈かずえまち〉へ。一転して、茶屋街の華やかなムードに包まれました。しかし、路地の奥には「暗がり坂」「あかり坂」といった、細い石段が、闇に続く。

光と陰とのコントラストは、金沢の魅力の一つです。暗がり坂は泉鏡花〈いずみきょうか〉ゆかりの道ですが、鏡花の作品から漂う、どこか遠くに連れていかれそうな闇の引力が、金沢の坂には宿っているのでした。

(ノジュール2019年10月号からの抜粋です。購入希望の方はこちらをご覧ください。)
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