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歩き方の黄金メソッド

「1日8000歩、20分の速歩き」で
一生歩ける体をつくろう

文=腰本文子 写真=原田圭介 イラスト=伊藤美樹

健康長寿を目指すには、日頃から「どんな運動」を「どの程度」すれば効果的なのでしょうか。
その答えが「歩き方」にあることを長年の調査研究によって明らかにし、〝奇跡の研究〟と注目されているのが、東京都健康長寿医療センター研究所の青栁幸利〈あおやぎゆきとし〉氏が取り組んでいる「中之条〈なかのじょう〉研究」です。
中之条町(群馬県)から全国へと広がった″歩き方の黄金メソッド″について伺いました。

20年にわたる中之条研究で
健康長寿の秘訣が明らかに

群馬県北西部に位置する、人口1万8000人ほどの中之条町。美しい自然に囲まれたこの地で、身体活動と病気予防の関係についての調査研究がスタートしたのは、今から20年前のことだ。東京都健康長寿医療センター研究所の青栁幸利先生は、研究の目的を次のように語る。「当時、高齢者の健康増進には歩行能力が欠かせないと認識されていたものの、どれくらい身体活動をすれば病気を予防できるのかという、客観的な数値はほとんどありませんでした。高齢者の健康増進や病気予防に最適な、日常の身体活動の量・質・タイミングなどの総合パターンを解明したい。そこで、中之条町に調査の協力をお願いしました」

調査対象は、中之条町に住む65歳以上のほぼ全住民(重度の認知症と寝たきりの人を除く、5000人強)。歩きを含む日常の身体活動状況、食生活、睡眠時間、労働時間、病気の有無などのアンケート調査を行い、健康診断のデータを提供してもらう。また、希望者には町が歩数と運動強度がわかる身体活動量計を無料貸し出し。各人の身体活動状況のデータをモニタリングしながら、現在も調査研究が続けられている。「身体活動量計を利用される皆さんには、1日24時間1年365日、入浴やプールに入るとき以外は体から外さないようにお願いしています。そうして得た、膨大なデータを分析した結果、健康長寿につながる〝歩き方〞が存在することがわかったのです」

それが、青栁先生が提唱する「1日8000歩、うち20分の中強度〈ちゅうきょうど〉ウォーキング」という、歩き方の黄金律だ。耳慣れない「中強度」という言葉だが、具体的にどんな歩き方を意味するのだろうか。

病気予防のカギは
〝歩数〞と〝中強度〞活動

当てはめて簡単に説明すると、歩くスピードの程度を意味します。例えば、低強度とはゆっくりとした歩行速度。これに対して中強度は、ふだん自分が歩くスピードよりも〝やや速歩き〞と考えればいいでしょう。

中之条研究を通してわかったのは、1日の身体活動のうち、その人にとって中強度に当たる活動ができている人ほど、年をとっても病気になりにくいということでした。さらに、1日の平均歩数や中強度の活動をどの程度行うかにより、どんな病気を予防できるかも明らかになりました」

青栁幸利 〈あおやぎ・ゆきとし〉
東京都健康長寿医療センター研究所 運動科学研究室長。1962年生まれ。
トロント大学大学院医学系研究科博士課程修了。
医学博士。故郷である群馬県中之条町をベースに身体活動と病気予防の関係についての調査研究を行う。そこから導き出された「青栁式 速歩き健康法」が注目を集め、全国に広がる。『やってはいけないウォーキング』(SB新書)ほか著書多数。

(ノジュール2020年3月号からの抜粋です。購入希望の方はこちらをご覧ください。)
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