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ハチ公が歩いた三叉路の街

渋谷・原宿

文=松尾裕美 写真=村岡栄治

渋谷駅周辺で、年規模の大規模な再開発が進んでいる。
戦前は亡き主人を駅前で待ち続けた忠犬ハチ公、年代は公園通りのおいしい生活、平成に入ってからは渋谷系ミュージックやマルキュー(渋谷109)界隈のコギャル、スクランブル交差点のヒーロー・DJポリス。
時代時代のアイコンを生んだこの街の今昔を、渋谷の街を特徴付ける三叉路を結んで歩いてみました。

※掲載内容は取材時点の情報に基づきます。新型コロナウィルスの感染拡大防止などにより、各施設が臨時休業、または一部利用不可となる場合があります。営業状況や再開の予定などは、各施設へおでかけ前にご確認ください。

谷底の街・渋谷は
いつも天空を目指してきた
いちばん近い盛り場は渋谷だった。母に連れられて東横百貨店に行くワクワク感、東急文化会館屋上の五島プラネタリムに通い詰め、ビルの3階から出発する地下鉄を見上げたことを今もはっきりと覚えている。

そんな幼馴染の街が、大規模再開発で激変中だ。東急文化会館は渋谷ヒカリエに、東急プラザは渋谷フクラスになり、東横線は地下深くに潜り、開業ラッシュが続いている。最新施設は昨年月にオープンした渋谷スクランブルスクエアだ。地下2階〜階には、「中川政七商店」など、背骨に理念と物語を持つ最旬のショップやレストランが集結する。そして最上部分にある渋谷スカイは、渋谷最高峰の展望施設。変わりゆく街を360度見晴らせ、頭上には新飛行ルートで羽田に向かう飛行機が意外なほど近く見える。かつてはプラネタリウムで、そして今は展望施設で、すり鉢地形の谷底の屋上は、いつも空へ宇宙へと心を誘ってくれる。

その直下が今や世界的に有名なスクランブル交差点。渋谷109の三叉路を奥に見る風景は、渋谷のアイコンだ。ここに立つ「渋谷西村フルーツパーラー」は現在3代目。「祖母はハチ公に餌をやったと言ってましたよ」と専務の西村元孝〈もとたか〉さんは言う。年も交差点を見守り続けてきた、街の定点観測所的存在だ。かつてのロゴマークにあった2つの星は、明けの明星と宵の明星を両方とも見るくらい働けという創業者の家訓だという。ボーダレスな人が行きかうため汚れがちな街路の環境浄化美化活動にも西村さんは取り組んでいる。働き方は自分で決めたかつての日本人の熱い気概が今も輝く。

交差点の下は渋谷地下街、通称「しぶちか」だ。風景もテナントも目まぐるしく変わる地上とは対照的に安定の昭和感で、なんだかほっとする。「ペットグッズさとう」の佐藤剛〈たけし〉さんも3代目。しぶちか青年団の代表として、警備や美化にも力を尽くす。渋谷の空は大企業が開き、地上は古くから商いを続ける地元商店主が、見えないところで支えている。

表通りの文化と
裏通りの混沌と
スクランブル交差点の三叉路を右へ、西武渋谷店を過ぎて渋谷モディの三叉路を左へ行けば公園通りだ。だらだらの上り坂が嫌だとだだをこねた妹をおんぶして代々木オリンピックプールに行った年代には人もまばらで、たしか区役所通りといった。年代に入り、「すれちがう人が美しい〜渋谷〜公園通り」をキャッチフレーズに渋谷PARCOがオープンするや、スタイリッシュな坂に様変わりしたのにはビックリした。食べるために働いた戦後を乗り越え、文化の色をまとって生活自体がおいしくなった。

(ノジュール2020年4月号からの抜粋です。購入希望の方はこちらをご覧ください。)
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