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1泊2日の〝絶景〞フルコース!

女ひとり
天空の水鏡とこんぴら詣り

文=岸本葉子 写真=中田浩資

〝うどん県〞香川は、うどんだけではありません。
歴史に彩られた、こんぴらさんこと金刀比羅宮や丸亀城。
そして、知られざる2つの〝天空〞の絶景を求めて。
エッセイスト・岸本葉子さんがひとり旅で見た、新しい香川県(中西讃エリア)の魅力とは?

旅の始まりは、讃岐名物
うどんタクシーにお任せ
日々の暮らしの中では、ささいなことが気になりがち。胸のすくような眺めに会ってのびのびしたい。香川は日本一狭い県ながら、絶景に恵まれていると聞く。今度の旅は、よし、そこだ。

香川といえば讃岐うどん。高松空港に降りれば、あのタクシーだ。天ぷらうどんの模型が屋根に載っている。「うどんタクシー」は空港からうどん店へと案内ののち、次の目的地まで連れていってくれる。立ち寄るうどん店もすべて運転手任せ。移動の足の確保が課題のひとり旅には、とても便利。「手打ちうどんたむら」は、自分で探していたらたぶん見過ごしていた。ガレージを備えた民家のよう。セルフ式で、店主が丼に入れてくれるうどんを、自分で柄つきざるを持って湯にくぐらせ、タンク状のサーバーからだしを注ぐ。そのうどんのもっちり感といったら、粉モノ好きにはたまらない。打ち立てのうどんを、10分ほどかけてゆで、水で締めておくそうだ。

ふと見ると、五右衛門風呂のような鉄釜から、次のをちょうど引き揚げるところ。文字どおり釜揚げだ。地元の人はこれを食べたくて、わざわざゆだるのを待つという。千載一遇の好機。生醤油をかけただけで、なんという旨さ。しょっぱなからこの幸運、よい旅になりそうだ。

運転手の多田純〈ただじゅん〉さんの勧めるままに、「めんや七福別邸」へとはしごしてしまう。こちらは趣向を変えて、フルサービスの店だ。小上がりに落ち着けば、ほどなく運ばれてくる「金の釜揚げ」。桶に張ってあるのは湯ではなく、熱々のだし。うどんをすくうたび、いりこだしのふわっとした香りが鼻を包む。

(ノジュール2020年5月号からの抜粋です。購入希望の方はこちらをご覧ください。)
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