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東京 自由が丘モンブラン

日本式! 幸せの黄色いモンブラン

文=中津海麻子、坂本真由美(スケープス) 写真=桑田瑞穂、橋本剛志

ひとりの洋菓子職人の
情熱と行動力から生まれた
登山が好きな日本人の洋菓子職人は、ヨーロッパの最高峰モンブランを初めて目にしたとき、その優美な姿に心をつかまれた。そして決心する。

「この美しさを表現する菓子を作る。そして、山の名を冠した自分の店を出そう」

その職人、迫田千万億〈さこたちまお〉氏が名峰モンブランの麓の町、フランスのシャモニーを旅したのは昭和初期のこと。名峰モンブランの美しさを目の当たりにした感動の勢いのまま、旅の滞在中にシャモニー市と、シャモニーにあるホテル「ホテルモンブラン」から、「モンブラン」の屋号を使う許可を得たという。

帰国した千万億氏は、都内で洋菓子店「モンブラン」を開業する。ショーケースを彩ったケーキが、その名も「モンブラン」。フランスで出会った郷土菓子にヒントを得て、持ち帰りできるケーキの形に仕立て上げた。「当店のモンブランは黄色いマロンペーストが特徴ですが、それは日本人の口に合うようにと栗の甘露煮を用いたためです」と、モンブラン専務取締役でシェフパティシエである迫田直幸さん。マロンペーストで山肌を、上に乗せたメレンゲが山の頂の雪を表現しているという。

「聖地」の
ランドマークとして
変わらぬ味を届け続ける
戦後、東京・自由が丘に店を構え、今も同じ場所で同じレシピのモンブランを提供し続ける。素朴ながら繊細な甘さのマロンペースト、フワフワのカステラ生地にさっぱりとした生クリーム、濃厚なカスタードクリーム……。口の中で様々な味わい、食感がハーモニーを奏でる。当初から国産栗にこだわっていたが、現在は愛媛県産の「中山栗」を中心に、より美味しい栗を厳選して使用。傾斜の強い畑で育つ中山栗は、過酷な環境ゆえ実にしっかりと栄養と旨味を蓄え、極上の香りと甘みを持つ。迫田さんはこう語る。

「時代の移り変わりとともに、変えるべきことは変え、進化していくことは大事。一方で、うちのモンブランを思い出とともに愛してくださるたくさんのお客さまのために、見た目や基本の味わいなどはこれからも変えることなく守り続けていきたい。そう考えています」千万億氏はモンブランを考案した際、商標登録はしなかったという。「日本の洋菓子業界の発展のためにも、モンブランというケーキを自分たちだけで独占するべきではない。良いものはどんどん広まってほしい」という思いがあったためだ。

次々とトレンドが変わるスイーツの世界で、モンブランは定番として君臨しながら新しさも発信し続けている。日本のモンブラン発祥の地、自由が丘にはモンブランを出す話題の店が次々と登場。日本の、そして自由が丘に広がるモンブラン百花繚乱の光景に、千万億氏はうれしそうに目を細めているのではないだろうか。

(ノジュール2020年10月号からの抜粋です。購入希望の方はこちらをご覧ください。)
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