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山下先生流

東寺の歩き方

文=笹沢隆徳(エイジャ) 写真=上牧佑、エアロ工房

京都に数あるお寺の中でも、東寺は山下先生が足繁く訪れる寺のひとつ。
先生ならではの視点で東寺の楽しみ方をお聞きしました。

好き勝手に見学
それが東寺の魅力
美術史研究家という職業がら、数え切れないほど京都を訪れている山下先生。その山下先生が、京都でもっとも足を運ぶ寺のひとつが東寺だ。

「何しろ京都駅から徒歩圏内にあるでしょう。電車の待ち時間などにふらっと立ち寄れる気軽さがいいんです」

気軽さもさることながら、山下先生は東寺境内に流れる〝空気〞が、特にお気に入りの様子。

「京都有数の由緒と格式、宝物を誇る寺院でありながら、だだっ広い境内にお堂がドンと並んでいるだけ。放っておいてくれるというか、〝どうぞ勝手にご覧ください〞というような素っ気なさが気持ちいいんです」

そんな寺だけに、東寺には拝観ルートのようなものも特にない。山下先生の言う〝だだっ広い〞境内を、好きなように歩き回れるのが魅力だ。町中の寺院だけに起伏もなく、平坦で歩きやすいのもうれしい。

特別公開や貴重な
生身供も要注目
境内のほぼ中央に拝観受付がある東寺では、五重塔、講堂、金堂の3棟が立つ東側は有料エリアとして仕切られているが、それ以外は、拝観料が必要な建物はあるものの、基本的には自由に歩き回ることができる。そのなかで、特にこの冬おすすめの見どころが、通常は門を閉ざしている小子房。8年ぶりの公開が行われているので、総檜の建物の美しさはもとより、東寺では唯一といっていい雅やかな空間をぜひ体感したい。

小子房の北に立つ御影堂(みえいどう)は大師堂とも呼ばれ、かつて空海の住まいだった建物。現在は弘法大師坐像が安置され、東寺でもっとも大事な建物といえる。国宝建築だが、堂内では毎朝6時から、誰でも参加できる生身供(しょうじんく)の法要が営まれている。無数の寺院がある京都において、一般参拝者が参列できる法要が毎日行われているのは東寺のみ。弘法大師に対する人々の信仰の篤さが垣間見えるので、機会があれば参列するのもおすすめだ。御影堂は、2020年6月に屋根の葺き替えを終えたばかり。山下先生が「カーブがたおやかで美しい」という屋根のラインにも要注目。

黒焦げの四天王を安置する食堂の北側、門の外に立つ塔頭寺院の観智院は、以前は年に数回の特別公開だったが、現在では通年公開が行われている。武蔵の筆による客殿の墨絵も必見だが、本堂に安置された重要文化財の五大虚空蔵菩薩坐像も、「中国伝来で、5体とも面長で細み。それぞれの仏像が乗る動物の表情も味がある」と、山下先生が拝観をすすめる仏像。客殿の広縁に腰をおろし、白砂の美しい庭園を眺めるのも一興だ。

(ノジュール2021年1月号からの抜粋です。購入希望の方はこちらをご覧ください。)
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