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「冷えは万病のもと」は真実

ほうっておくと怖い
冷えのメカニズムを知る

文=編集室りっか イラスト=木波本陽子

〝冷え″には長い歴史があり、約2000年前に出版された中国の古典にも、さまざまな冷えの症状と治療法が記されています。それほど古くから人々を悩ませてきた冷え。
木村先生に、冷えのメカニズムについて伺いました。

西洋医学では異常なし でも冷えるのはなぜ?寒さが厳しくなるこの季節に、なんとなく不調を訴える人の原因は、実は〝冷え〞であることが多いのです。「手足の先が冷たい不快感だけでなく、肩こりや胃もたれ、下痢や便秘、よく眠れない、冬になると疲れやすいといった症状も、じつは冷えが原因の場合があります」と木村先生は言います。

膠原病(こうげんびょう)や甲状腺機能低下症、貧血、低血圧も、冷えをもたらす原因になります。でも、これらは病気を治療することで、冷えの症状もおさまります。「ところが西洋医学的には明らかな異常がないのに、冷えを訴える人が増えています。これが漢方医学でいう『冷え性』です」

自分の不調の原因が〝冷え〞にあるかを判断するには、まず温めてみること。「頭痛や腹痛、肩こりなどの症状があり、検査をしても明らかな異常がない場合、その不調が『お風呂に入れば改善する』『腹巻をすれば改善する』など、温めることでよくなるなら、その原因は冷えかもしれません」

ホメオスタシスがカギ 冷えのメカニズムそもそもヒトはなぜ冷えるのでしょうか。「ヒトの体には、暑くても寒くても体の働きを一定に保とうとするホメオスタシス(恒常性維持機能)があり、脳の視床下部がその司令塔になっています。ところが何らかの理由でこの機能が崩れると、体温調整機能が落ちて〝冷え〞が生じるのです。熱を放出することに対して、熱の生産が間に合わず、冷えが進んで低体温になるわけです」

その原因と考えられるのが、強いストレス。仕事や人間関係をはじめ、気温や天候などの変化が体にとってストレスになると、自律神経のバランスが崩れます。すると交感神経が緊張して血管が収縮し、血流が悪くなるので、手足が冷えます。肩こりや腰痛などの痛みが現れることもあり、内臓の働きも悪くなって新陳代謝が低下します。「体が冷えて代謝力が落ちると、肌荒れやむくみ、肥満の原因にもなります。また、免疫機能は深部体温が37℃前後で働くようになっているので、体温が35℃台と低くなると、免疫力にも悪影響を与える可能性があります。風邪をひきやすくなるなど、感染症にもかかりやすくなるんです」と、冷えの怖さは広がります。「『冷えは万病のもと』という言葉は、じつに的を射ています。冷えはすべての不調のもとになり、放置しては危険。体を冷やさないことが、健康管理の基本になることを理解しましょう」

監修木村容子〈きむら ようこ〉
医師。医学博士。東京女子医科大学附属東洋医学研究所所長、教授。日本内科学会認定医。日本東洋医学会理事、専門医。
お茶の水女子大学を卒業後、中央官庁入省(国家公務員)。
英国オックスフォード大学大学院に留学中に漢方に出合い、帰国後に退職して医学部に学士入学。
2019年より現職。著書に『カラダとココロの「プチ不調」に気づいたら』(静山社)など。

(ノジュール2021年1月号からの抜粋です。購入希望の方はこちらをご覧ください。)
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