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日本の原風景を探しに

秘境のローカル線で奥会津へ

文=堀内 志保 写真=堀内 孝

全国有数の秘境路線として知られるJR只見線。その魅力は、沿線を流れる雄大な只見川と、
深い山々がつくりだす四季折々の豊かな表情にあります。
雪深い地にあって、数々の災害に遭いながらも力強く生きる人びとの心にも触れます。

風情あふれる駅で下車し
赤べこの伝説残る名刹へ
JR只見線は、福島県の会津若松駅と新潟県の小出駅とを県境を越えて結ぶ全長135・2kmの路線。雪深い土地にあって、地元の大切な交通手段として愛されてきた路線だ。
会津若松駅から旅をスタート。乗り込む車両はステンレス車体のキハE120系。クリーム色に緑のラインのキハ系が令和2年(2020)春、定期運行を終了し、只見線の新しい顔となった。会津盆地の田園風景を楽しみ、1時間ほどで会津柳津〈やないづ〉駅に到着。木造平屋建ての駅舎は、なんとも懐かしい雰囲気だ。SL「C11244」も静態保存され、迫力ある車体を間近に見ることができる。

柳津は福満虚空藏菩薩〈ふくまんこくうぞうぼさつ〉 霊巖山〈れいがんざん〉 圓藏寺〈えんぞうじ〉の門前町として栄えてきた。駅から続く道沿いにはその面影残る風情が漂う。石段を上り、仁王門をくぐって圓藏寺本堂の菊きっ光こう堂どうへ。心静かに手を合わせると、心が清らかになるのを感じた。圓藏寺は丑年・寅年の守り本尊でもある。来年末にかけ「会津やないづ丑寅まつり」を開催中で、のぼり旗の奉納やイベントなどが行われている。境内には開運撫牛〈かいうんなでうし〉の石像を撫で、開運や病気平癒を願う人びとの姿もあった。柳津は会津の民芸品・赤べこの伝説発祥の地。約400年前、会津を襲った大地震で被害を受けた本堂を再建する際、赤毛の牛が現れて難工事を助けたという。人びとは赤毛の牛に感謝し、忍耐や力強さを象徴して福を呼ぶ赤べこに親しんできた。

(ノジュール2021年9月号からの抜粋です。購入希望の方はこちらをご覧ください。)
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