老後に備えるあんしんマネー学 第20回

さまざまな情報が飛び交うなか、老後資金に不安を抱えている人も多いのではないでしょうか。
お金を上手に管理して、老後を安心かつ心豊かに暮らすための、備えのマネー術を紹介します。

高齢期のリフォームは
いくらまでかけて
大丈夫ですか?

文=畠中雅子 写真=平田利之

仕事をリタイアして自宅で過ごす時間が長くなると、「居住スペースを快適にしたい」と考える方は多いと思います。
退職金などで、まとまったお金が手に入った時期でもあり、大掛かりなリフォームをおこなうご家庭も少なくありません。
ですが、高齢期のリフォームは大切な老後資金を減らすことになり、慎重におこなう必要があります。
そこで今月は、高齢期のリフォームの注意点についてご紹介します。

予期せぬトラブルのための
費用は予め確保する
高齢期のリフォームは、新しいシステムキッチンに替えたり、お風呂場をシステムバスにするなど、水回りの工事をされる方が多いはずです。ご夫婦それぞれの希望を叶えるとしたら、家中をリフォームしなければならないほどの、大規模な工事が必要になるかもしれません。

貯蓄が積み上がっていった現役時代と違って、貯蓄を切り崩して暮らしていく高齢期は、リフォーム費用を控えめに考えることが大切です。控えめにするためには「リフォームをしたい場所」から考えるのではなく、「リフォーム代として、使ってもよい金額」の計算を先に行いましょう。まずはリフォームにかけられそうな金額を見積もってみるのがおすすめです。そのうえで、リフォーム代として使えそうな金額から、将来の予期せぬ雨漏りやトイレの水漏れなどの家のトラブルに備えて、100~150万円程度は手元に残しておくのが安全です。

高齢期の年間赤字は
約40~80万円が一般的
退職金を受け取ってしばらくは、人生の中で資産額がもっとも高額になるのが一般的。「1000万円を超えるリフォームをしても、老後資金は持つだろう」と考える方も少なくないようです。

ただ、老後は平均して30年くらいの長い時間が残されています。ボーナスのない年金生活では、固定資産税や自動車税などの支出は、銀行口座から自動的に引き落とされるケースも多く、こうした目に見えにくい支出で資産は減っていきます。

銀行口座の引き落としに月々の赤字を合わせると、年間で40〜80万円ほどの赤字が発生するご家庭が多くなります。仮に現在65歳だとして、年間の赤字が60万円だとすると、60万円×(95歳–65歳)=1800万円は赤字補填に充てるお金です。リフォーム代として使うことはできません。

はたなか まさこ
ファイナンシャルプランナー。
新聞・雑誌・ウェブなどに多数の連載を持つほか、セミナー講師、講演を行う。
「高齢期のお金を考える会」「働けない子どものお金を考える会」などを主宰。
『ラクに楽しくお金を貯めている私の「貯金簿」』(ぱる出版)など著書多数。

(ノジュール2022年6月号からの抜粋です。購入希望の方はこちらをご覧ください。)
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