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神聖な水の流れを追って

下鴨・糺の森を歩く

文=深谷美和 写真=ハリー中西

かつて下鴨神社の境内から湧いていたと言われる禊の池。
今でも夏になると境内の御手洗池〈みたらし〉で夏越の神事が行われています。
やがて鴨川へと注ぐ清冽な小川の流れを辿って、朝の清々しい空気の中、神聖な森から下鴨一帯を散策してみましょう。

鴨川下流の聖地
下鴨神社を参拝
京都駅前から市バスで約30分、市街を流れる鴨川を遡るように移動すると、下鴨エリアに到着する。あたりは、京都を北から南へ流れる高野川と賀茂川の合流地点で、古代から水の恵みを受けて発展してきた地。平安建都以前から豪族の賀茂氏が拠点とし、一族の祭祀の場として神聖視されてきたという。付近には、京都御苑や京都大学吉田キャンパスなどもあり、どこかアカデミックな雰囲気が漂う。

市バス停下鴨神社前で降車し、まず西参道から世界遺産・下鴨神社の境内へ。背の高い広葉樹が生い茂る朝の境内へ足を踏み入れると、それまで聞こえていた車の音が聞こえなくなり、空気がガラッと変わる。そして、かすかに水の気配。耳に入るのは葉擦れの音や小鳥の鳴き声ばかりで、自分が神域に来たことをごく自然に意識する。

下鴨神社の正式名称は賀茂御祖神社〈かもみおやじんじゃ〉で、本殿の西殿に賀茂建角身命〈かたけつぬみのみこと〉、東殿に玉依媛命〈たまよりひめのみこと〉を祭る。二柱の神は親子関係で、賀茂建角身命は五穀豊穣や勝利の神として、玉依媛命は縁結びや安産、水の神として信仰されている。下鴨神社の通称は、鴨川の下流に祭られていることからついたそうだ。本殿前で御祭神に手を合わせたら、すがすがしい水の気配に誘われて、境内の東側にある御手洗社(井上社)へ。

(ノジュール2022年8月号からの抜粋です。購入希望の方はこちらをご覧ください。)
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