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佐賀県有田町を訪ねて
歴史を彩った優美な名品から
有田焼を知る
文=山口あゆみ・品川雅彦 写真=入江啓祐・宮本武
旅する前に知識を仕入れていなくても、佐賀県立九州陶磁文化館に行けば、有田焼の歴史を順序立てて学べ、多くの名品を鑑賞できる。こちらは昭和55年(1980)のオープンだが、今年4月にリニューアル。展示方法も一層洗練され、ゆったりとした空間が広がっている。
そもそも有田焼の歴史は、この町で原料となる陶石白磁の鉱脈が発見されたことに始まる。その西暦年には諸説あるが、江戸時代初期にあたる1610年代というのが有力。そこから色絵磁器や、海外への輸出と作品に対する高い評価などのステップを踏んで、有田焼は世界のブランドとなった。
ちなみに、有田焼とともに高い評価を得ている伊万里焼は、伊万里に佐賀藩の藩窯が築かれ、徳川幕府への献上品(鍋島様式)が焼かれたことで名を馳せた。もちろん現在の伊万里にも名陶は数多くある。
館内には、カフェテラス彩も併設されている。根を詰めて鑑賞した後だから、リラックスしたい。コーヒーとケーキセット750円を注文した。店の人からの説明では「カップは古伊万里を使っております」とのこと。実際に運ばれてその器を見た。荒波の中を龍が舞い、波間には楼閣が描かれたものと、水辺に生える植物の沢瀉〈おもだか〉と白鷺が描かれたもの。この2つを前に少しばかり緊張して持ち上げ、ゆるゆるとコーヒーを口にし、ゆっくりと丁寧に皿の上に置いた。こういう得がたい経験ができるところが有田の奥深さだ。