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FUJIYAMAツインテラス・富士山遥拝所

様々な視点で巡る
現代の富嶽百景

文=高田京子 写真=中田浩資

葛飾北斎が描いた「冨嶽三十六景」、太宰治の「富嶽百景」など、日本人の富士山への思いは深く、古くから畏れ敬われてきました。ここ数年では、富士山の展望スポットがあちこちに誕生し話題になっています。いつの世も人々を感動させる富嶽絶景を訪ねてみましょう。


富士山の絶景と
心ゆくまで向き合う
富士急行線河口湖駅からレンタカーを走らせること30分。すずらん群生地駐車場で乗り換えたシャトルバスはさらにグングンと標高を上げていく。終点でバスを降りたら、あとは徒歩で階段を上ること5分。うっすら汗をかき始めた頃に木立が途切れ、パッと視界が開けた。たなびく雲をまとい、天空に浮かぶような富士山が目の前に現れる。2021年夏に完成したFUJIYAMAツインテラスの「セカンドテラス」だ。そのまま東に80m進むと“本命”の「ファーストテラス」が待っている。眼下の河口湖から白く冠雪した富士山の頂まで、さえぎるものなく見渡せて、ひんやりとした山の空気が清々しい。

テラスの先からじっと目を凝らすと、山肌に刻まれた稜線のひとつひとつが朝日を受けて輝いていた。天から静かに人間の営みを見守っているような富士山を眺めていると、自然と畏敬の念が湧いてくるのは日本人だからだろうか。

FUJIYAMAツインテラスがある新道峠は、山梨県笛吹市にある展望地だ。河口湖と富士山が織りなす絶景は、以前から登山家やカメラマンから愛されてきた。ここから東へ1時間ほど山道を進めば御坂山地最高峰の黒岳まで行けるとあって、テラスには山歩き途中で立ち寄る人も多い。

すずらん群生地の花の見頃は5月下旬から6月上旬。貴重な「にほんすずらん」種がこの規模で群生しているところは全国的にも珍しいそうだ。1周20分の遊歩道があり、天然の白樺林や山野草が広がる森の中を散策できる。太宰治は「富嶽百景」で「富士には、月見草がよく似合う」という名句を生んだが、可憐さ、健気さで言えばすずらんもまた「富士にはよく似合う」花かもしれない。

(ノジュール2023年3月号からの抜粋です。購入希望の方はこちらをご覧ください。)
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