老後に備えるあんしんマネー学 第32回

さまざまな情報が飛び交うなか、老後資金に不安を抱えている人も多いのではないでしょうか。
お金を上手に管理して、老後を安心かつ心豊かに暮らすための、備えのマネー術を紹介します。

知って安心。生前事務委任契約と死後事務委任契約

文=畠中雅子 写真=平田利之

あまり考えたくない話かもしれませんが、入院や高齢者施設に入居しようとする際には、身元保証人が求められます。身元保証人は、入院費の支払いを保証したり、手術を行う際の書類へのサイン、施設費用などの支払いを保証する人のことです。原則として、身元保証人がいないと、入院も施設入居も難しくなります。

実際に身元保証人を立てられなくて困ったという経験を持つ方はたくさんいます。では、子どものいない方や身寄りのない場合などはどうすればいいのでしょうか。そこで今回は、身元保証人の役割を担うサービスについてご紹介します。

入院時の手続きや手術の
承諾も家族の代わりに行う
身内に身元保証人の役割を担う人がいない場合は、その役割を代行してくれる会社や団体に依頼する方法があります。身元保証サービスを「業として行う」会社があるからです。身元保証サービスを提供する会社は、150社以上あると言われています。

身元保証サービスの例は、病院に入院する際の身元引受人としての役割、医療上の判断が必要な手術の承諾の代理、高齢者施設へ入居する際の身元引受人としての役割のほか、通院時の付き添い、緊急搬送時の連絡先の登録、介護保険の各種手続き、不動産の管理など、本来は家族が行うべき、生活していく上で必要となる手続きを代行してくれます。

どのようなことを、いくらの費用で頼めるかは、会社ごとに異なりますが、一般的には契約をした後、月々数千円から1万円程度の会費を支払い、手を借りるたびにかかった費用の実費や手続き費用を支払います。

身内ではない第三者に手続きを頼むわけですから、頼むたびに費用がかかるのは当然ですが、お子さんがいない、家族に負担をかけたくない、体力の低下などで外出がままならない、家族がいても遠方に住んでいてすぐに駆け付けてもらうのが難しい場合なども、身元保証の契約を結ぶことで、いざというときの安心を得ることができます。身元保証のサービスは、「生前事務委任契約」とも呼ばれます。

死亡後のさまざまな
手続きも代行してくれる
身元保証のサービスに加え、「死後事務」を請け負う会社もあります。死後事務とは、葬儀や火葬、納骨に関する手配、電気・ガス・水道などのライフラインの解約手続き、健康保険や公的年金の脱退手続き、自宅の片づけや賃貸住宅の解約手続き、パソコンや携帯電話内の情報の消去や廃棄の手続き、郵便物の処理、ペットの処遇など、多岐にわたります。

死後事務を依頼するには、生前に必要な金額を預ける必要があります。葬儀に関しても、直葬(火葬のみの1日葬)でいいのか、家族葬を希望するのかなど、事前に希望する葬儀を伝えておき、祭壇などのオプションも選んで、必要なお金を見積もった上で預けます。納骨についても、先祖のお墓に入りたいのか、納骨堂や樹木葬を希望するのかなどを決めておきます。生前に死後の契約をしておくことで、自分の希望する場所に納骨してもらえます。また、預けたお金に残余金が発生した場合は、そのお金を誰に渡すのかなども生前に決めておきます。

はたなか まさこ
ファイナンシャルプランナー。
新聞・雑誌・ウェブなどに多数の連載を持つほか、セミナー講師、講演を行う。
「高齢期のお金を考える会」「働けない子どものお金を考える会」などを主宰。
『ラクに楽しくお金を貯めている私の「貯金簿」』(ぱる出版)など著書多数。

(ノジュール2023年6月号からの抜粋です。購入希望の方はこちらをご覧ください。)
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