老後に備えるあんしんマネー学 第38回

さまざまな情報が飛び交うなか、老後資金に不安を抱えている人も多いのではないでしょうか。
お金を上手に管理して、老後を安心かつ心豊かに暮らすための、備えのマネー術を紹介します。

年末年始の帰省費用について
親側は援助をしていますか?

文=畠中雅子 イラスト=平田利之

コロナ禍も落ち着いてきたことから、年末年始は帰省される方も増えるでしょう。久しぶりにお孫さんに会えることを、楽しみにされている方も多いと思います。
年末年始の帰省については、心待ちにしている半面、帰省費用を援助したり、普段よりも豪華な食事を準備したりと、費用がかさむことを気にされる親御さんもいるのではないでしょうか。お子さんやお孫さんに会いたい気持ちはあっても、余裕のない年金暮らしでは、お金のことが気になるのも現実だと思います。そこで今月は、帰省にかかる費用の援助について考えます。

帰省費用の負担で老後資金が
数百万円まで目減りした
年に数回ほど、お子さんたちと会える機会となる帰省費用の援助について、第三者からとやかく言われたくないと感じる方もいるかもしれません。家族水入らずの時間だから、多少、金銭的に厳しくても目をつむりたいと考える方もいるでしょう。ですが、老後の生活設計の相談の中では、「帰省費用の援助」が、老後資金を減らす原因のひとつになっている現実もあります。

実際の相談者のケースから、帰省費用にまつわるお悩み例をご紹介します。

最初は、ご主人を亡くされて10年が過ぎた、ひとり暮らしの70代後半の方の話です。「趣味もなく、夏休みと年末年始に子どもと孫たちに会うのを楽しみに、日々はつましく暮らしています。帰省のたびに、2人の子どもにそれぞれ10万円ずつ、年間40万円ほど渡してきましたが、貯蓄は800万円くらいしか残っていません。自分自身の老後資金が心配になってきたものの、帰省費用を渡さないと、孫たちに会えなくなるかもしれないと考えると、貯蓄額を伝える勇気がありません。どうしたらいいでしょうか」

次の相談は、帰省費用に加えて、教育資金の援助もしている60代後半の女性のケースです。「子どもは1人ですが、孫が3人います。現在の資産状況の記入例年末には、飛行機を利用して帰省してくれますので、そのたびに交通費として15万円を渡しています。加えて、お年玉や教育資金の援助の意味も含めて、毎回30万円ほどを渡してきました。日々の生活費は年金でなんとかまかなえていますが、固定資産税のような年金ではまかなえない支出もあり、貯蓄は少しずつ減っています。教育資金の援助は減らしたいのですが、すでにあてにされている感じもあり、どのように言い出したらいいのかを悩んでいます」

お子さんやお孫さんの帰省を心待ちにしながらも、本音では自分たちの老後資金に不安を感じる現実もあるわけです。

親のフトコロ事情は
年末年始に子どもに伝えよう
帰省費用の援助を負担に感じるなら、早めにお子さんに伝えることをおすすめします。言い出せないまま時間が経つと、介護が必要になったときに、自分の貯蓄では思い通りの介護が受けられなくなる可能性もありますし、亡くなった後まで貯蓄額を隠し通せるわけではありません。

これまで気前よく資金援助をしてくれた親の貯蓄が、介護がスタートしてみたらほとんどなかったというのもよくある話で、このようなケースではお子さんが間違いなく困惑します。それまでの親は、「お金の援助をしてくれる頼もしい存在」だったのに、現実は「自分たちが資金援助をしなければ、安心できる介護を受けるのも難しい状況」に変わるわけです。お子さん側からすると、心の準備をする時間のないまま、親に対して資金援助をしなくてはならなくなるケースもあります。

はたなか まさこ
ファイナンシャルプランナー。
新聞・雑誌・ウェブなどに多数の連載を持つほか、セミナー講師、講演を行う。
「高齢期のお金を考える会」「働けない子どものお金を考える会」などを主宰。
最新刊『70歳からの人生を豊かにするお金の新常識』(高橋書店)など著書多数。

(ノジュール2023年12月号からの抜粋です。購入希望の方はこちらをご覧ください。)
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