老後に備えるあんしんマネー学 第40回

さまざまな情報が飛び交うなか、老後資金に不安を抱えている人も多いのではないでしょうか。
お金を上手に管理して、老後を安心かつ心豊かに暮らすための、備えのマネー術を紹介します。

年金生活でも確定申告が
必要な人と不要な人とは?

文=畠中雅子 写真=平田利之

今年も2月16日から、確定申告が始まります。年金暮らしに入ったら確定申告は必要ないと思う人がいるかもしれませんが、年金以外の収入がある場合や、医療費控除や保険料控除を利用したいなら、確定申告が必要になります。今月は、主に年金生活者の確定申告について説明していきます。

年収400万円以下の
年金生活者は確定申告不要
制度で申告が原則免除に
確定申告は、1月から12月までの1年間に得た収入と、かかった経費や控除額などを計算して、必要な分の所得税を納める手続きです。確定申告をおこなうことで、6月から支払う住民税額が確定します。

勤めていた時であれば、年末調整の際に会社側から求められる書類を提出するだけで、会社側が納税までを代行してくれました。ただ、退職して年金生活に入ると、納税に必要な手続きの多くを、自分でおこなわなければなりません。

ただし収入は年金だけで、その金額が400万円以下の場合と、年金収入が400万円以下で、他の雑所得が20万円以下の場合は、年金生活者の「確定申告不要制度」が利用できます。下の条件に当てはまる年金生活者の方は、確定申告が免除されます(図1)。

ただし、年金から所得税が源泉徴収されている場合、確定申告によって所得税を取り戻せる可能性があります。また確定申告をして所得を下げられれば、住民税も下げられます。

加えて住民税額が下がれば、その住民税額に連動して金額が決まる国民健康保険料や公的介護保険料も下がります。確定申告をして住民税を下げておくことは、税金のみならず、社会保険料の節約にもつながるのです

年金生活者の医療費控除は
「所得の5%」の選択が有利
制度で申告が原則免除に
所得税を減らすためには、控除を使って課税される所得を減らす必要があります。確定申告の際に申告する方が多い控除は、「医療費控除」です。医療費控除は1年間に10万円を超える医療費を支払った場合か、所得の5%を超える医療費を支払った場合に申告できる制度です。

多くの方は医療費控除について、医療費が10万円を超えたら申告できる制度と思われているはずですが、年金生活者の場合、「所得の5%」を選択したほうが有利なケースが多くなります。

所得の5%とは、年金受給額から110万円(65歳以上の場合)の公的年金控除を引いた金額を指します。仮に年金収入が240万円だとすると、240万円‐110万円=130万円が、所得額になります。所得に当たる130万円の5%は6万5000円。この金額を医療費から引けばよいことになります。所得の5%を引くほうが、10万円を引くよりも医療費控除額を増やせて有利になります。

また、健康診断やがん検診などを受けた人が、年間で1万2000円を超えるスイッチOTC医薬品を購入すると、医療費控除の特例に当たる「セルフメディケーション税制」の申告ができます。スイッチOTC医薬品は、処方箋が必要な医療用医薬品の中から、有効性や安全性が認められている医薬品を、ドラッグストアなどで購入できるようにしたものです。対象の医薬品には、薬の外箱に青い文字で「セルフメディケーション 税 控除 対象」と印刷されているほか、レシートにもセルフメディケーション税制の対象医薬品である旨が記載されています。

医療費控除とセルフメディケーション税制は、どちらかを選択しなければならず、両方の控除を同時に利用することはできません。ただし、スイッチOTC医薬品の購入額を、医療費控除に含めることは可能です。例えば医療費が20万円、スイッチOTC医薬品の購入額が2万円、年金収入が240万円の場合、20万円+2万円から6万5000円(前出の計算結果を引用)を引いた「15万5000円」を医療費控除として申告できる計算になります。

はたなか まさこ
ファイナンシャルプランナー。
新聞・雑誌・ウェブなどに多数の連載を持つほか、セミナー講師、講演を行う。
「高齢期のお金を考える会」「働けない子どものお金を考える会」などを主宰。
最新刊『70歳からの人生を豊かにするお金の新常識』(高橋書店)など著書多数。

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